【Another】恒一「……中村青司？」-SS速報VIP

【Another】恒一「……中村青司？」

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318:名無しNIPPER[saga]
2019/02/23(土) 22:34:06.95 ID:mQm9OJvR0
今回の事件の要因にぼくという人間の「特殊性」があるというのは、確かにそうかもしれない。
だがそれを言うなら、「特殊性」は事件の舞台――"夜見山の人形館"にもあったはずだ。

なぜならあそこは……中村青司が建てた「館」、すなわち「死に近い場所」だったのだから。
三年三組という「死に近い場所」に巣食う＜災厄＞が伝播する先としては、これほどおあつらえ向きの場所もないだろう。

以下略 AAS

319:名無しNIPPER[saga]
2019/02/23(土) 22:34:50.42 ID:mQm9OJvR0
「それって……霧果さんと美津代さんのこと？」

「……そうね」

眼帯を覆い隠すようにして、鳴は顔に手を当てる。

以下略 AAS

320:名無しNIPPER[saga]
2019/02/23(土) 22:35:49.81 ID:mQm9OJvR0
「わたしもあの人とあんな風に過ごすのは初めてだったし、一回だけのつもりで試しに『お母さん』って呼んでみたら、嬉しいを通り越して泣きそうな顔するし……だから結局、それで通さざるを得なくなったりして」

「……」

そう話す鳴は今、霧果さんも美津代さんも「お母さん」とは呼んでいない。

以下略 AAS

321:名無しNIPPER[saga]
2019/02/23(土) 22:36:25.82 ID:mQm9OJvR0
そこまで言ったところで、鳴は天井を見上げるようにして「あーあ」と声を上げる。
鳴にしては珍しい、どこか投げやりな響きがそこにはあった。

「いっそのこと、わたしも東京の高校にでも行っちゃおうかなぁ」

以下略 AAS

322:名無しNIPPER[saga]
2019/02/23(土) 22:36:58.95 ID:mQm9OJvR0
――鳴が東京？　本当に？
だがぼくが何かを言うよりも早く、鳴はくすりと笑う。

「……なんてね、冗談」

以下略 AAS

323:名無しNIPPER[saga]
2019/02/23(土) 22:37:28.40 ID:mQm9OJvR0
「だから、当分の間はお別れになるのかな。わたしはたぶん、夜見山を離れることはないと思うから」

「……霧果さんのことがあるから？」

「それもあるけど……他にもちょっと、考えてることがあって」

以下略 AAS

324:名無しNIPPER[saga]
2019/02/23(土) 22:37:57.31 ID:mQm9OJvR0
「……ごめんごめん、つい。――質問攻めは嫌い、だったよね」

「これ以上は拒否します、ってわけじゃないけど……わたしだって榊原くんに訊きたいこと、あるのに」

「そうだよね。じゃ、交代しよっか？　……見崎、質問をどうぞ」

以下略 AAS

325:名無しNIPPER[saga]
2019/02/23(土) 22:38:36.39 ID:mQm9OJvR0
「『いやだ』……って、あの時言ったよね、榊原くん。わたしが＜死者＞のこと、覚えてないって言った後に」

「……ああ。えっと……」

「それとももう、忘れちゃった？」

以下略 AAS

326:名無しNIPPER[saga]
2019/02/23(土) 22:39:14.47 ID:mQm9OJvR0
もし怜子さんのこと、今年の＜死者＞にまつわる全てを忘れてしまうのなら、その時はきっと。
きっと、鳴と一緒にそうなるのだと、ぼくはそう思い込んでいたのだ。

だけど現実はそうじゃなく、ぼくは置いていかれた。
だからそれが嫌だった。

以下略 AAS

327:名無しNIPPER[saga]
2019/02/23(土) 22:39:57.93 ID:mQm9OJvR0
……こんなこと、正直に言えるわけがないし、何よりぼくが恥ずかしい。
だからぼくは、

「うん、そうだね。……そうだったのかもしれない」

以下略 AAS

328:名無しNIPPER[saga]
2019/02/23(土) 22:40:37.51 ID:mQm9OJvR0
言いたくない、知られたくないことは、ぼくにだってある。
それに触れてしまわぬように、鳴はそっと手を引いてくれた。

「……ありがとう、見崎」

以下略 AAS

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