110:名無しNIPPER[saga]
2019/01/29(火) 22:16:48.06 ID:yaPXPFdJo
男「二月ともなると、昼間はあったかいな」
女「……」
男「春はもうちょっと先か?」
女「……そうですね」
男「……」
女「……お兄さん、詩をひとつ、思い出しました」
男「詩?」
女「はい。吉野弘の、二月の小舟という詩です」
男「……」
女「『冬を運び出すにしては、小さすぎる舟です。春を運びこむにしても、小さすぎる舟です』」
男「……『ですから、時間が掛かるでしょう。冬が春になるまでは』」
女「知ってるんですか?」
男「こないだ本屋に平置きされてたよ」
女「……『川の胸乳がふくらむまでは、まだまだ、時間が掛かるでしょう』」
男「……公衆の場で詩をそらんじるなよ。恥ずかしいやつ」
女「お、お兄さんも乗っかったじゃないですか」
男「生きることは恥を晒すことだからな」
女「それっぽいこと言ってごまかそうとしないでください。それに、どうせ、他には誰もいないんですから、平気です」
男「……ま、たしかにな」
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