11: ◆Dt4E8frZ9k[saga]
2019/01/16(水) 07:34:48.32 ID:1UKtzxtK0
「あなたのことがずっと前から好きだったんです。付き合ってください!」
淀みなく口から出たことに一先ず安堵していた。
ぎゅっと目を瞑り、顔を伏せたが、階段の下にいる彼女には俺の表情が丸見えだったかもしれない。
俺が彼女の返答を期待して顔を上げると、彼女は笑みを見せる。
「お気持ちありがとうございます。嬉しいです」
「でも、ごめんなさい。私はまだ誰と付き合うこともできないの」
「だってこと恋がどういうものかまだ分かってないから」
その時、俺には何の感情も湧かなかった。
ただただ綺麗に告白して、綺麗にふられたな、と。
清々しかったのかもしれない。
自然と涙が溢れた。
しかし、何故だか分からない。
この結果が俺にとって最良かのように俺には感じられた。
「あ、あの。これ良かったら」
彼女は桜の刺繍が入ったハンカチを差し出した。
彼女の手に触れて、胸が高鳴る自分にまた悲しくなった。
だか、すべすべとしたハンカチの感触に落ち着きを取り戻した。
「じゃあ、これで。それはいつ返してもらってもいいですし、なんなら貰っていただいてもいいので」
俺は小走りで帰っていく彼女の姿をただただ無言で見送った。
たった数十秒間の出来事であったが俺はこの不思議な感覚にずっと浸っていたいような気分だった。
少し寂しいけど、心の中では晴れやかな。
悲しい小説を読んだ後のような気分。
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