【艦これ】阿武隈「北上さんなんて、大っ嫌いなんだから!」
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52: ◆axPwtNeSoU[saga]
2018/12/19(水) 13:15:25.32 ID:ER7oh7KA0


世にスイーツは数あれど、間宮のアイスは羊羹と並んで絶品中の絶品メニュー、文字通り疲れも吹き飛ばす美味しさだ。


「えー、なんで阿武隈ちゃんだけー? ずるいずるーい! あたしのはー?」


ほくほく顔で冷蔵庫の中を漁りだす阿武隈を指差して、鬼怒がぷぅ、と口をとがらせる。


「ひとつしかないんだからしょうがないわよ。そもそもあれ、あたしが買ったんじゃなくて、最初っから阿武隈への贈り物だからね」

「贈り物って誰からー?」



五十鈴は意味ありげな目つきでくすりと笑い、阿武隈をちらりと見た。


「北上からよ。阿武隈が帰る少し前にあいつが来て置いてったの」


アイスをスプーンですくおうとしていた阿武隈の手がぴたりと止まる。

「今日は結構頑張ってたから、ご褒美に渡しといてやってくれ、ってさ」


少しだけ悪い笑顔になる五十鈴。


「……い〜い先輩もったわねぇ、あ・ぶ・く・ま♪」


くすくす笑いながら五十鈴が出て行った後も、阿武隈は固まったままだった。


「えーと、阿武隈ちゃん? 食べないの?」

「……」


何やら心の中で葛藤があるようだ。


「……お〜い」

「う、うるさいなぁ! ちゃんと食べるわよ! 間宮さんのアイスに罪があるわけじゃないもんね!!」

「……いやそーじゃなくてあたしにもちょっとひと口……」

「さっき大笑いしてた人にはあげない!」

「そんな殺生なー!!」


阿武隈は両手を合わせて拝み倒す鬼怒を無視して、スプーンを口に運んだ。

ひんやりしたなめらかな舌触りと、とろけるような上品な甘さが口の中に広がる。身体中に沁みわたって、疲れを一気に溶かしていくようだ。

(……ふ、ふんだ! こんなことでごまかされたりなんかしないもん!)


阿武隈は親の仇のような勢いでアイスをすくい取っては口に運んでいく。


「北上さんなんか……だい、だい、大っ嫌いなんだから!!」

「阿武隈ちゃぁん! お願いひと口、ひと口でいいから〜〜〜〜!!」




……非常に不本意で、腹立たしいことではあったが。



その時食べた間宮のアイスは――それまで食べてきた中でもこれ以上ないくらい美味しく、身体中に沁みわたる、格別な味わいだった。





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