14: ◆FreegeF7ndth[saga]
2018/12/09(日) 13:08:54.10 ID:fZLSzMfRo
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アタシはホテルを飛び出しながら、シキちゃんに電話を入れた。
『シキちゃん! アタシだよ、フレちゃんだよ! 今どこにいるの? ブルックリンでしょ?』
『フレちゃん――そだね。あたし、今、ブルックリンのホテルだけど――』
アタシは街路を走りながら、頬が勝手に緩んでくのを感じた。
『アタシ、いま、パリの――今、リュクサンブールに向かってる!』
走る、走る――パリジェンヌにしては、おてんばすぎかな?
走って、走って、走って――目的地に、着く。
アタシは、電話の向こうのシキちゃんに向かって、叫んだ。
『自由の女神(スタチュー・オブ・リバティー)、見えるかなっ!』
『――ちょっと待ってて!』
シキちゃんの、はーっ、はーっって息遣いが聞こえる。
しばらくして。
『見えるよ、フレちゃん! 自由の女神っ』
『アタシにも、見えるんだよ。自由の、女神っ!』
アタシは、リュクサンブール公園にある、自由の女神の前にいた。
ニューヨークの女神像制作の準備のために作られた、アーキタイプ。
『ねぇ、今――アタシたち、同じ像を見てるよ!』
――アタシたち、大西洋を飛び越えて、自由の女神でつながってる!
アハハ、自由の女神でつながるって。へんなの。
でも、まぁ、レイジーなアタシとシキちゃんには、
きっとそのぐらいいい加減なのが、ちょうどいいよね。
『にゃは――にゃはははっ! あたしたち、自由だ、自由だっ!』
『あはは、あはははっ!』
アタシは、鎖をだらんとぶら下げながら、興奮した吐息を携帯電話に浴びせ続けた。
(おしまい)
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