バットマン「グランド……オーダー?」レオナルド「その3だね」
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42: ◆GmHi5G5d.E[saga]
2018/11/20(火) 19:40:51.05 ID:GYV8vN900



 獣じみた声が、濃霧のしじまを震わせた。

「今のは……?」

 首を傾げ、建物の陰を見つめるパラケルスス。その足元には、既に打倒されたジャックが横たわる。このままトドメを刺すところだったが、それを取りやめ、異様な威圧感の出どころを探る。

 次の瞬間、飛び出した影あり。それはナイフを構え、赤い瞳の残光を霧中に残し、凄まじいスピードでパラケルスス目掛けて飛び掛かった。

「っ」

 パラケルススは短剣でナイフを受け止め、突進をいなす。受け流された影は地面に手をつき、石畳を抉りながら鬼じみたターンで再度襲い掛かる。魔術師はギリギリで受け、ナイフの切っ先を弾き逸らした。

 散る火花。克明に映し出された凄惨な笑み。ジキル博士の顔を持ちながら、それはもはやジキルではなかった。パラケルススの背を恐怖が駆け抜ける。

「とうとう出て来ましたか」
「待ちくたびれたかよ、説教野郎」

 ハイドは笑う。笑い、蹴りを繰り出す。パラケルススは飛び退き、魔法陣を……

「っ」

 一瞬で危険を察知したパラケルススは短剣を打ち振り、飛来した弾丸を叩き切る。物陰で銃を構えているのは、ワトソン医師だ。そして……

「へッ、余所見したか?」

 ぞわり。魔術師は背後へ短剣を突き出した。いや、突き出そうとした。その時既に、パラケルススの胸からナイフの刃が飛び出していた。


「……申し訳、ありません」


 その死の瞬間、パラケルススの……おのれの罪が許されぬものと信じて疑う事のなかった魔術師の口から、謝罪が漏れた。それは理想の向こうへと歩む同志へ向けたものか、それとも顔もかすむ誰かへ向けた謝罪だっただろうか。それを知る術はもはやない。

 呆気ないほど静かに、魔術師は倒れ伏した。





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