真壁瑞希「恋するアセロラ・サイダー」【ミリマスSS】
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◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:46:31.21 ID:NGPIxQq80
学校へ行くときはもちろんのことだが、遊びに出掛けるときでさえずっと制服を着ていた。スカートのウエストがへそ上に収まるように位置を合わせ、ネクタイを軽く締めると、不思議と落ち着くからだ。流石に寝るときには着ないけれど。
事務所にも制服で通っていたが、しばらくしてある日、プロデューサーが私服をもう少し積極的に着てみたらどうかと提案してきた。なかなかお節介な提案だと訝しんだけれど、「自分自身を表現する術を瑞希が知りたがってたからさ。私服でまず表現するっていうのも、一つの手じゃないかと思って」という彼の言葉も一理あった。
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AAS
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◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:49:58.20 ID:NGPIxQq80
しかし、いざ私服を着ようと思っても、算段がない。親に買ってもらった私服はあるけれど、その当時はクローゼットの中で日の目を見ることなく眠らされており、それらの服もどのように着ればよいか分からない。悩んだ末、プロデューサーに相談すると、彼はファッションに明るそうなアイドルを数人呼んできた。みんな親身になって私の悩みに応じ、服の組み合わせ方を教えてくれた。街に出てアパレル・ショップに行くこともあったが、次第に皆のテンションが上がり、私は着せ替え人形のようにたくさんの服を着る羽目になった。
そうして皆で見繕った服を着て、私が事務所を訪れたときの記憶は、今も鮮やかに残っている。プロデューサーが私の姿を見るやいなや、呆然として私を眺めていた。それから表情を明るくして、
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AAS
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◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:51:17.42 ID:NGPIxQq80
今では、学校から直接シアターや事務所へ向かうとき以外は、なるべく私服で通うようになった。どんな服を着ようかと前の晩からベッドの上で悩む姿を、昔の私が見たら、きっとビックリするだろう。最近だと、私が着てきた服を見て、プロデューサーはどんな反応をするだろうかと気になって、違う意味で落ち着かなくなる。でも、それ以上に、彼に見てもらいたい。
襟元が崩れないよう、きちんと正す。そして、普段はあまり付けないヘアピンを手に取った。装飾に付いている小さなハートのエースが可愛らしいと最近買ったものだ。私はそのヘアピンを、彼に気付いてほしいと念を込めて、髪に留めた。
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AAS
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◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:52:54.40 ID:NGPIxQq80
改札を抜け、事務所へ続く道に出た。午前とはいえ、秋晴れ広がる空の下は暖かだ。上を仰ぐと、ビルとビルの隙間に、一つ、真っ白で大きな雲が浮かんでいた。横広に楕円で、片方は尾ひれが付いていて、それは空飛ぶクジラのようだ。
信号待ちの間に、シャツやスカートにしわが寄っていないかどうか、開店前の喫茶の窓を鏡にして確認する。……うん、大丈夫。髪型も、気付いてくれたらいいなと期待しながら、念入りに整える。
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AAS
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◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:53:50.11 ID:NGPIxQq80
「おはようございます、プロデューサー。一人ですか?」
「うん。社長も音無さんも、出掛けたよ」
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AAS
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◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:55:29.56 ID:NGPIxQq80
「お、今日も私服だ。最近は制服ばかりじゃなくなったな」
「流石はプロデューサー、気付いてくれましたか」
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AAS
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◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:57:51.44 ID:3wSsqTkg0
「後はそうだな......。」
プロデューサーの視線が私の足元から頭の頂点へと動き、そして私の目をとらえた。真剣な眼差しだから、胸の鼓動が早くなる。
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AAS
27
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◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:59:41.81 ID:3wSsqTkg0
「瑞希ってそういう可愛らしい服も似合うけど、体系がスレンダーだから、キチっとしたような格好いい服も似合うよなあ」
……ほう。
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AAS
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◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 23:01:45.00 ID:3wSsqTkg0
「わ、悪かった。そんな怒んないでくれよ」
「いいでしょう。プロデューサーの反省に免じて、許します」
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AAS
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◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 23:03:13.62 ID:3wSsqTkg0
「よかった。じゃあ、この冊子にCMの概要が書いてるから、ちょっと目を通して」
受け取った冊子をめくると、CMは二種類あり、内容が絵コンテのようなもので描かれている。私は、二つ目の内容が載ったページに目が留まった。
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AAS
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◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 23:05:03.27 ID:3wSsqTkg0
「たかだか三十秒くらいのCMだけど、かなり色んな表現描写もあるから、瑞希にとって大きなステップアップになると思う」
それから彼は私をじっと見据えた。視線が私の心をとらえ、私は息を飲んだ。
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AAS
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