52: ◆wIGwbeMIJg
2018/08/06(月) 23:23:20.25 ID:yVF65aIb0
長い夢をみた。
Tシャツが肌にへばりつくような暑さにうなされて目が覚める。
永遠に小学三年生が終わらない、そんなありえない夢。
窓の外では、その日も昨日と何も変わらずに一日は始まっていた。
蝉の声が途切れることなく聞こえてくる。
部屋の白い壁紙も、天井の消してある電気も、時間の流れも、俺も、何も変わっていない。
窓から青々と広がる空に大きく分厚い入道雲が浮かんでいるのが見えて、俺は通り雨でも降るかもしれないと、そう思ったのだった。
家の中で電話の鳴る音がした。
暫くするとパタパタとスリッパで廊下を小走りする音がして、電話の呼び鈴がとまった。
ゴトリ、
なんの音だろうと考えた。
そしてあぁ、受話器を落とした音かもしれないと、そう頭の隅っこで考えた。
「…とし、さとし!」
バタバタ大きな音を立てて母さんが部屋に飛び込んでくる。
皮肉なことにあいつとのどんな思い出よりも、一番鮮やかに思い出すのは、この時の記憶だった。
「大野君が…亡くなったって…」
大きい音を出してやってきたくせに、その事実を俺に告げたその声は、やけに小さく震えていた。
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