299:名無しNIPPER[saga sage]
2020/01/17(金) 15:55:56.90 ID:KOzKQsUKo
『明日から熱戦が始まります』
『球児たちの様々なドラマが生まれるでしょう』
一輝「……」
栞奈「ドラマ……ねぇ」
一輝「ん? あれ? あの二人は?」
栞奈「日向はキマリのとこ。報瀬は親に連絡するって、個室に戻ったよ」
一輝「そうか」
栞奈「今、美人アナウンサーが言ってたドラマってさ、なんだろうね」
一輝「……マウンドに立つ選手たちが、抱えてるのも……じゃないか。悩みとか壁とか」
栞奈「それを乗り越えて優勝したら栄光を浴びる。そういうのがドラマ?」
一輝「なにが言いたい?」
栞奈「その栄光を赤の他人が見て、感動できるの?」
一輝「よくやったな、おめでとう。とは思うだろ」
栞奈「それは努力が実った瞬間に立ち会って、賞賛してるんだよね」
一輝「……」
栞奈「創作物のドラマと違ってさ、
実在する私の知らない人がどんな感動的な行動をしても、私の心が動くことはないんだよね」
一輝「……」
栞奈「私はその人の生い立ちを知らないから」
一輝「……穿った見方してるな」
栞奈「そうかな……。……やっぱり、変?」
一輝「いや、それは分かるよ。俺たちにもそういう人がいるから」
栞奈「ほう……聞かせてくれたまえ」
一輝「なんで偉そうなんだよ……。知識とか情熱……とか、誰よりも持ってるのに、
体格が恵まれなくて万年補欠の先輩がいてさ」
栞奈「ふむふむ」
一輝「それでも、好きな野球からは離れなくて……。そんな人が最後の試合に出場したんだよ」
栞奈「へぇ……」
一輝「監督も他の選手もその人の努力を知ってたから、記念に……ってな」
栞奈「……」
一輝「正直、俺はイラついた。だけど、俺には何も言う資格はないから黙ってるしかなかった」
栞奈「どこにイラついたの?」
一輝「だって、記念だぜ? 勝負の世界に、記念に参加するってなんだよってさ」
栞奈「あぁ……うん、なるほど」
一輝「マネージャーも不満顔だったから、何か言うんだと思ってたけど、黙ってた」
栞奈「……どうして」
一輝「理由が気に入らないだけで、その人が居れば勝てる、と思ったんだろう」
栞奈「結果は?」
一輝「負けた」
栞奈「……」
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