90: ◆6yAIjHWMyQ[saga]
2019/01/19(土) 00:10:05.80 ID:pmprOgPyO
そんなやり取りをしていると時間と車は進んでいったようで、私たちは曙のいる鎮守府に到着した。
その少し前からフロントガラス越しに見えていた漆喰を塗られた塀と立派な松の木をはじめとした植物達のせいで、内部の様子を窺うことはできなかった。
私の座っている助手席側、つまり進行方向左側を正門前に向けて停車。日本家屋を元にした鎮守府とは聞いていたが、重厚な正門の側に憲兵さんがいなければどう見ても鎮守府には見えなかった。
助手席の窓が開けられる。
私は憲兵さんと一言二言会話しながら先ほど貰った私の身分証を提示する。次にグラサン提督の身分証を右から左へ受け流す。一瞬見えたグラサン提督の名字。『烏山』というらしい。
すると身分証の確認をしていた憲兵さんがおひょうと素っ頓狂な声を上げた。あたふたした様子でしばらくお持ちくださいと言い、正門のわきに在する小門の方へ小走りで向かって行く。
私はグラサン提督に疑いの目を向ける。
「話は通してあるって言ったのはどの口かしらぁ?」
自分の顎に人差し指を引っ掛け首をかしげてみせる。
「誰かが来るのは伝えていたが、誰が来るかは伝えないで遊んでいるんだろうなぁ。あの憲兵君は新人だろうに可哀想だ。」
グラサン提督はサングラスを黒色のハードケースに仕舞いながら答えた。グラサン提督は烏山提督になった。
はぁとため息が二つ。私の右側にいる烏山提督と戻ってきた憲兵さんからほぼ同時に聞こえた。それが妙に面白くてくすくすと笑ってしまった。
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