48: ◆6yAIjHWMyQ[saga]
2018/11/18(日) 22:04:40.74 ID:EApYW/Rz0
そして翌日になった。
うららかな春の朝日は、布団から私を追い出して目を覚まさせる事はするが、気持ちまでは晴れ晴れとしたものにしてくれない。
今日は曙に会う日。千代田の鎮守府の方が距離は近いのだけれどもそれは日程の関係。
支度を終えた私はここの提督――――サングラスを掛けているからグラサン提督と呼ぶことにした――――に鎮守府内の如何にもな高級車が置いてあるところまで案内された。
するとグラサン提督から助手席のドアを開けられてどうぞお嬢様と微笑まれた。サングラス姿も相まって非常に付き人らしくみえた。
ありがとうお・じ・さ・ま♪と冗談を言うと渋い顔をされた。イケナイ事をしているみたいだって。不審艦を匿っているのはイケナイ事じゃないかしらぁ。
そう言うと何故か勝ち誇った顔をするグラサン提督。不気味だわぁ。
グラサン提督が機嫌良く運転している横で、私は三日月から貸してもらっていた書物の続きを読む。この世界の艦娘の扱いや歴史などを頭に入れる為だ。
あっ、この世界だと『本営』表記が『大本営』表記になっているのねぇ〜。細かいところにも気をつけなきゃ。
そんな感じで読み進めていると、グラサン提督にグローブボックスを開けてみてと言われた。何が欲しいのか聞いてみてもまぁまぁ良いから開けてみてと言われるだけ。
「私の分のサングラスでもあるのかしらぁ〜?怪しい人ねぇ。」
なんて返しながらきっと私に被害が及ぶようなことは起きないだろうと思い、短い付き合いだがグラサン提督を信用している自分に内心驚きつつ、グローブボックスを開けてみる。
中には車検証と思わしき書類が積まれており、その上に艦娘の身分証明証があった。手に取って見てみる。
『グラサン提督の鎮守府近海でドロップ。以降無所属。』
先ほどの勝ち誇ったような顔をした原因はこれかと頭を抱えた。大鳳の男女関係観を聞いた時の事を思い出した。あの時も頭を抱えたわ。
「大本営に申請してドロップ艦として私の身分証明書を発行したのね。公文書偽装じゃないの。」
「そこそこの権力を持っているから平気だよ。こういう良い事に使う分には特にね。ウチの近海でドロップして倉庫に潜んでいたとすれば嘘じゃない。」
「どこかの鎮守府に所属したい時とか買い物をする時にそれを持っていれば色々便利に事が進む。生活していく上で必要だろう?せっかく作ったから貰ってくれるとうれしいな。」
「仕方ないわね〜。じゃあ……貰っておいてあ・げ・る♪」
出来るだけ迷惑をかけたくないと思う一方、私はこの世界に存在しても良いのだと言われたようで気持ちに少し日が射した。
900Res/720.55 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20