188:名無しNIPPER[sage saga]
2018/09/02(日) 18:33:52.20 ID:rr1Aanow0
「ごめんなさい。オーラスを始める前になんだけど、トイレの場所聞いてもいいかしら。ちょっと近くて」
「手洗いか。ならここを出て左、昇ってきた階段をさらに行ったところにあるよ。綺麗なほうが良ければ本校舎に行ったほうがいい、渡り廊下を進んですぐだからわかると思う」
弘世さんが即答する。言われてみれば、ここに来る途中に視界の端に捕えた気がしないでもない。
「そうなの。じゃあ折角だし本校舎にお邪魔しようかな。ゆみも行きましょ」
「私? いや、特にもよおしてるわけでもないし」
「まあまあ、いいでしょ。真夏に急にクーラー効いた部屋に入ったんだもの。すぐ来るわよ」
およそ乗り気ではないようなゆみの手を引く。多少強引かもしれないが、ゆみには私の思い付きを、単なる思い付きでなく策になるのかどうか聞いてもらいたいんだ。
「わ、わかったから。牌譜を……」
なにやら訴えているゆみと首をかしげる若干名を後目に部屋を離れる。なあに問題ない、仮に変に思われても、私の考えにあちらさんが及ぶことはまずないんだから。
‐白糸台本校舎・女子トイレ‐
本校舎のどのあたりにトイレはあるんだろうか、急いてしまって聞きそびれた。渡り廊下を歩いているときにそんな思考が浮かんできたが、幸いお目当ての赤い看板は校舎を移ってすぐのところだった。弘世さんの補足がなかった時点で、まぁそうかもとは思っていたけれど。
いざトイレに入るときに何かもの足りなさを感じたけれど、ゆみに聞いてもピンと来ていない様子だったので私の気のせいかもしれない。ピンク色の扉の中には、全体的に白い壁の両側に個室が四個ずつ。個室を隔てる薄い壁は扉とはまた別の、白と呼ぶか迷うくらいの淡い桃色をしていた。八枚の戸はすべてが内側に開いた状態になっている。
「よし!ここなら誰にも聞かれないわね」
念のため、トイレ最奥の窓まで寄る。察してゆみも私についてきてくれる。
「……何か用があるのか? 宮永さんや弘世さんは別に尾行してきたりしないと思うが」
「どうでしょうね。それに別に、聞かれて困る相手はあの二人だけじゃないかもしれないし」
「清澄の三人が?」
「あの子たちも一部といえばそうね。他にも白糸台の人とかいるかもしれないでしょ?」
「警備員とか教員とかってことか」
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