【偽三次創作】どこかの誰かの話 その2【のんびり、まったり】
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36:俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU[sage saga]
2018/08/25(土) 22:23:04.37 ID:MfBpqw0F0
>>26よりの続きです。


張勲殿とやり取りをしている間は、許楮殿達には離れた場所で待ってもらっている。その点を考慮して改めて、
「張勲殿。同行がいるので一度出直したい。ついてはそちらから私だけを如南城内へ入れるようとりなしていただけるだろうか」
丁寧に頼み込む。
んー。となにやら考え込む、というより企む風で、
「別にいいですけど、側に人がいてもいいですかぁ?」
……何をどうしたいのかはわからんが、殺すなら既に動いているだろうしましてや袁逢様より託された件を材料として出したのだ。斬った張ったにはならない気がするが、それほど軽く見ている。もしくは信用していない、か。
だが下手な人物は側に置くまい、事は袁中枢にも関わる。それ位は考慮の内だと思いたい。
正直、様々な憶測、推測で渦巻く私自身の内面を見透かしたようにクスリ、と笑うと、
「まだ『それ』を見せて貰ってませんからねぇ、『信用しろ』と言われても無理ですよ。ただ、袁逢様と貴方の、正確には横家の関係は見えない所で非常に深かったのは確かですので『話を聞く、現物を見る』価値はあると、思っただけですよ」
続けて、
「そちらの都合を片付けたら改めて『単身』で門前まで来てください。確かにまだ如南城内は取り散らかっている状態ですから」
そう言い残すと、くるり。こちらを一顧だにせずに振り向くと、細く開かれた城門の内側へ歩いて行く。
が、
「襲っちゃ嫌ですよ。いくらべた惚れの奥様と離れ離れが長いからといって目の前の女でコトを済まそうなんて鬼畜じゃありませんよねぇ?」
挑発とも冗談とも取れる言葉を背中越しに投げつけてくる。
……鬼畜だったら今頃逃げた先々でやらかしてるわ。つうか嫁に告げ口して修羅場の一つも画策するだろうが。
まさかと思うが、それをやられたら結構どころじゃない痛手だぞ。おい。
最後まで相手に心理戦を仕掛けてくるのは張家の戦略か?


「じゃぁ、私たちは如南城下でお留守番していればいいのですか?」
私の説明というか頼みを聴いた許楮殿の発言である。
「いや留守番というか、所在さえ分かるようにしていただけたら別に自由に行動してもらっても構いませんが」
「じゃぁ、如南見物してもいいのですね?」
「おい、なんか名物みたいなものがあるのか?」
「さて……旨い物なら多少は案内できやすがね」
「それでいいです」
「「いいのですか(い)!?」」
張勲殿とのやり取りの後に再度合流してのやり取りがこれである。肩の力が抜けるというか、和むというか。
で、兄貴分にも、
「済まんが、許楮殿を頼む。武の方は心配してないが下手に騒動を起こすと場合によっては袁と曹の問題になりかねん」
「わかりやした。わっしも如南(ここ)じゃちったぁ知られた男ですからね、上手いことやりまさぁ」
「頼む」
「頼まれやしょう」


「……で、ついでに色々裏の情報(ネタ)も探れば良いので?」
「……無理はするな。張家を甘く見ると本気で命取りになる、あくまで無頼の中だけで十分だ」
「……心しておきやす。いや、肝に銘じておきやすよ」
他の者が許楮殿の相手をしている間に兄貴分と密かに交わした会話である。


伝言(つなぎ)の方法を最後に打ち合わせると、一行から離れて単身如南城の奥へと向かう門前へ。
一応一行が滞在する宿で身なりをそれなりに整えて、万が一に備えての奥の手を仕込んでからである。得物はあえて持たず、儀仗兼護身の剣を佩いている。
門前ではまた、張勲殿が先に待っていた。


「のう張勲、この者は誰じゃ?」
張勲殿に案内されて、裏門というか多分城主にしか知らされていないだろうと思しき門から城内に入った私。そのままとある部屋に連れて来られたのだが、何故か袁術様がおられた。
「横殿、御挨拶を」
呆けていた私に、張勲殿がそう促す。慌てて礼を執ると、
「横超過、名を着と申します。南皮にて袁逢様、袁紹様に仕えておりました。袁術様の御尊顔を拝見致しました事光栄に思いまする」
名乗りを上げる。
「ほう、母様や姉様に仕えておったのか。なら、母様の事もよく知っておるな?」
幼くして母と死に分かれた為か袁逢様に仕えていた、という言葉に食いつかれる袁術様。人の親として様々な想いが胸中に渦巻くが、
「その話の前に、見ていただきたい物が御座います」
振りきると、懐から絹の袋に入れた物を取り出す。これこそが、私と袁逢様の間で交わされた約束を記した物である。
袁逢様が、「口約束では本家の説得もできまいて」と秘密を守れる数人のみに作らせたモノで、袁逢様に渡された分は一緒に墓の中に納められている。
これは、私に託された分で南皮出奔時に持ち出して以降肌身離さず持ち歩き、誰にも触れさせていない。
丁寧に袋の口紐を解くと、中の巻物を取り出す。一度両手で垂れた頭の上に捧げると、そのまま袁術様に向いて巻物を捧げる。
袁術様が私の両手のひらから巻物を取った。と感触と重みで判断すると頭を上げる。


袁術様は巻物を手に、なにやら逡巡されておられた。






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