【偽三次創作】どこかの誰かの話 その2【のんびり、まったり】
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俯瞰者
◆e/6HR7WSTU
[sage saga]
2021/01/31(日) 22:57:57.22 ID:HgkEBwbL0
さすがに何か投下しないとまずい。というわけで。
@@@@@@@
さて、無事に妊娠初期を乗り越えた麹義さん。
孕ませた原因(皇子)が定期的に張魯を招聘するので、
「そう毎回米五斗を寄進するのも大変でしょうに」
そう心配すると、皇子曰く、
「いやまぁ、前はそうだったのですが。何故か最近は張魯様御自身が結構ここ(南皮)に来られるのですよ。
その際に伝手を使って来ていただいているので、実際は診療代を金銀で払う分米五斗も払ってないですね。
その金銀で米を買えば少なくとも十斗以上は買えるでしょうけどね」
けろりとそう答える。
そんな日々を過ごしているうちに新たな命が宿る下腹部も目立ち始め、その頃から張魯に、
「激しく動かなければお腹の子に障ることもありませんので、まずは散歩などされてなまった体を動かされては?」
と言われたこともあって日中の頃良い時間帯に屋敷を散歩するようにしだした麹義さん。
いつものようにゆっくり、だがしっかりと歩みを進め同時に穏やかな陽光を身体に受けながら屋敷の中を巡っていると、どこからか視線を感じる。
(はて)
と視線が来たと思しき先を見ると、数人の子供がじっと麹義さんを見ている。
どうやら麹家の下働きとして引き取った孤児のうちの幾人からしいが、こちらを見ている子供たちの表情が暗い。
(何かあったか。ひょっとして大人どもにいたぶられでもしたのか)
たとえ孤児であっても、引き取った以上は我が子、我が弟妹。そう思って接している麹義さん。我が子、我が弟妹がいじめられているのならば、
相手が誰であろうとも盾になって守る。その為にはまず事情を聴かねば。
「これ。なんでそんなに暗い顔をしておる。家中の誰ぞにいじめられでもしたか」
そう声を掛けつつゆるゆると子供たちに近づいていく。
麹義さんの問いかけを聞いた子供たち。しきりに互いの顔を見合わせながらも、何か言いたげにもじもじしている。
その前にたどり着いた麹義さん。下腹部を自然とかばいつつ腰を屈めて子供たちと視線を合わせると、
「何か言いたいことでもあるのか?よければこの姉に教えてくれんか?」
優しく尋ねる。
それでもまだもじもじしていた子供たち。だがその中の一人が思い切ったように、
「姉様。おいら達はもういらない子なのか?」
そう聞いてくる。
「なぜそう思う?」
「だって、姉様には本当の子供が宿っているから、だから、お前たちみたいな拾われは用済みだって、出入りの大人たちが」
「なんと……」
確かに打算あって引き取った子供たちではある。あるが、少なくとも自分の力で生きていく術を自身のものにするまでは面倒をみる。
ましてやこの子たちは蛮族や賊共の襲撃で皆殺しになった集落で生き残った貴重な命達だ。それをそんな得手勝手な都合で捨てるだと?
そんなこと、自分自身も、そして盟友や今は亡き主人が許すはずもない。
「のう。姉がいつ「用済み」と言うた?それ以前に主らはモノなのか?違うぞ。主らはこの姉の大事な弟じゃ。弟が姉の手を借りずに一人立ちするまでは
支えてやるのが姉の務めじゃ」
視線を子供たちと合わせたまま優しく、毅然と答える麹義さん。
それにの。
知らず母の表情になった麹義さん。そう言葉を繋ぐと、
「これから生まれてくるこの子はの、お前たちの弟か妹じゃ。だのにお前たちがおらねばこの子は兄を知らずに育っていくのじゃぞ。
それはちと薄情ではないか」
ん?とまるですねる上の子をあやすように優しく諭す。
「じゃ、じゃあおいらたちはいてもいいんだよね」
「当り前じゃ。この麹家養い子の10や20抱えておっても揺るぎもせぬわ」
ははは。そう豪快に笑い飛ばしながら子供たちの髪をくしゃっとかき回す。
「ほれ、兵たちが手伝いを探しておるぞ。早う行って手伝ってやらんか」
人手を探しに来たと思わしき男達の姿を見ると、子供たちにも指で指し示してそう言ってやる。
麹義さんの本心を知った子供たちも納得したかはともかく、自分がここに必要な存在と知って安心したか顔色がよくなっている。
そのまま男達のほうへとぱたぱた駆けていく。
よっこい。とそろそろと立ち上がった麹義さん。その場にしばし佇みながら我が子と沢山の弟妹達との賑やかな日々に思いを馳せるのであった。
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