【偽三次創作】どこかの誰かの話 その2【のんびり、まったり】
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俯瞰者
◆e/6HR7WSTU
[sage saga]
2019/12/22(日) 20:47:20.30 ID:Oqca7qo00
久方ぶりに投下。といっても単発即興ですが。
「ど、どうだろうか?」
「そうですねぇ。基本はこれで合格、というところですね。ぶれずに同じ味を出せるようになりましたから」
「そ、そうか」
忘れられているかも知れないが、嫁修行中の麹義です。
現在は、旦那となるあの人に手料理を振舞う約束をしたので料理修行の最中ですが。
『着(横着)の嫁なら適任か』
と思って指導を頼んだのだが、
「戦場じゃないのですから、順番も量も適当に入れない。味もそうですが、旦那様に出すのなら盛り付けも切り方も味のうちです。
大体なぜ塩と砂糖だけ?食材ひとつひとつにちゃんと旨みは入ってます。それにあわせて調味料は入れるのです。
ほらまた!皮はそんな大雑把にむかない!刃物を扱うのは得意なんでしょう?ならちゃんと下ごしらえはしてください!」
指導は適切なのだが、容赦がない。
こちらも覚悟して教えを受けているからそのほうがありがたい。
ただ、あちらとしては普段通りなのだろうが実力差を見せ付けられるのは。
こちらを指導しつつ、何か作っているなと見てみれば野菜のくずで一品。怪訝な表情の私に、
「これは旦那様の好物なんです。芯の硬いところをこうやって茹でて炒めて和え物にすると丁度良いお酒のお供になるんですよ」
こちらは指示された一品作るのに悪戦苦闘しているというのに、これが女子力というやつか。
大体手元も見ずに包丁を使うわ、適当に包丁をふるっているように見えて食材を綺麗に切り揃えているわ、剣には自信がある私だが流石に包丁相手では
そうはいかん。
食材の調理順序一つにしても無造作に入れているようで、気がつけば味付けまで進んでいる。
一体どれだけ修行すればあのようになれるのだ。
「慣れですよ。それとおいしいものを食べさせたい相手がいれば自ずと変わります。麹義様もそういう方がおられるから、でしょう?」
ま、まぁそのなんだ、その通りなのだが。だが喜んでもらえるだろうか。口に合わずに落胆させないだろうか。
「うちの旦那様ならそちらの旦那様に正座で大説教ですわね。
『嫁がせっかく自分のために作った手料理だぞ。少々の失敗でどうこうはならん。第一その程度のことで嫁に対して愛情が減るのか?
貴様が求めた女だろうが!』
って、ね」
そして、いよいよその時が来た。
こちらとしては南皮の普通の家庭料理を出したのだが、なんというか宮殿で饗されるご馳走を前にしてるように見えるが。
「貴女の手料理ですよ。洛陽の厨師には申し訳ないですがこれ以上のご馳走はないです」
そういうなり、一品目に箸をつける。
ぱくり。
結果からいうと、物もいわずにひたすら食べてくれた。全てを何一つ残さず平らげてから、
「旨かったぁ」
とだけ。だが、なんだろうこの胸の奥にある湧き上がる嬉しさと愛おしさは。
また作ってやりたい、いや作りたい、そしてこの言葉をもう一度聴きたい。そう思った。
「ところで、うちの味を覚える気はありませんか?」
「それは義母上に教われ。ということか?」
「いや母が最近やたらと張り切ってまして。私一人では食べきれないんですよ」
「私がここ(南皮)を離れられれば教えを受けに行けるのだがな」
「いやこちらに来る気満々ですが」
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