3:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:11:32.04 ID:eCrKDArS0
さて、今、渋谷凛は家の花屋で店番をしている。
学校から帰ってくるなり親に留守を任されたのでエプロンの下は制服のままである。
客は一人も来ない。
退屈しのぎに店先の花の様子を見てみるものの、特に手入れが必要な商品もない。
その気になれば一日中花を眺めて過ごすこともできる凛だったが、この日は中々どうしてそんな気分になれなかった。
「友達か……でもハナコがいればわたしはべつに……」
凛はひとりごちた。
ハナコとは飼い犬の名前である。
凛は、ハナコと一緒に高校に通えたらいいのにな、と考え、それからハナコと一緒に授業を受ける風景を想像した。
悪くないな、と思った。
(ハナコは賢いから、もしかしたら私より勉強できるかも)
この飼い主は根が真面目だがどこか間の抜けたところがある。
むしろ遠慮せず率直に憚りなく個人的な見解を述べさせていただくならば、この渋谷凛、きわめてアホに近い人種である。
そのようなわけで凛は、ペットに勉強を教わるというおよそメルヘンな妄想にふけりながら花屋のカウンター席で一人「でゅふふ」とほくそ笑んだ。
「あ」
気が付くと入り口に人が立っていた。
女性客が凛を見て目をぽかんとしている。
この上なく緩みきった凛のニヤケ顔はそのままの表情で固まり、次の瞬間、恥ずかしさに耳まで真っ赤になった。
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