56: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/08/07(火) 21:52:12.73 ID:e4n5peSk0
===
そうして朋花は、何かを考え込むようにその指を自身の顎へ添えた。
視線はリタンガルヤの容器が置かれたテーブルの上に向いている。
彼女はそのままの姿勢でしばらく黙考した後で、
おもむろにプロデューサーへと向き直り、可愛らしくも艶やかな唇を動かした。
「プロデューサーさん、これをつけられてからどのくらいが?」
「……多分、二時間ぐらいは経ってるかな」
「二時間ですか〜。普通の香水なら、そろそろ匂いが無くなる頃ですかね〜」
言って、少女は確かめるように鼻を動かす。
すんすんと瞼をつむったなら、小首を傾げて目を開き、
不安げな表情を浮かべる男とゆっくり目を合わせて。
「……少し、分かり辛いですね」
プロデューサーと話がある。
数分前に、そう自ら人払いをした彼女には一つの自信とプライドがあった。
それは例え媚薬であろうとも、自分は決して誘惑に思考を惑わされたりなどしない、
というある種の自惚れにも似た考えだ。
何時如何なる時であろうとも、聖母たるものとして相応しくあらねばならないという自戒の念が今、
周囲の異性を強制的に発情させる性欲公害とでも言うべき存在となったプロデューサーと二人きりで同室に籠る理由でもあった。
すなわち、彼女はその身を進んで渦中に置くことで、
自らを試していたのである。これもまた一つの試練であると。
67Res/45.30 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20