15: ◆8PvrU9Ob/.[saga]
2018/07/09(月) 09:28:04.37 ID:ApRGfkc30
オークの村―――
こんこん、と少年オークの家の扉を叩かれました。
オーク「だれ?」
???「くっ、殺せ!」
オーク父「ひっ、ひえぇぇぇ。出たァ!!!!」
オーク父は「殺せ」という言葉を聞いただけでトラウマスイッチが入ってしまうのでした。
???「相変わらずのようですね、オーク。おや、息子がいるのですか」
オーク父「お前は、いつぞや姫騎士の身の回りをうろうろしていた少年か」
従者の右腕にはやけどの跡があり、オーク父にとっては見覚えがあるものでした。
姫騎士の周りの世話をしつつ、オーク父が当時の姫騎士(今の姫の母にあたる)を捕らえたときにそばにいた少年でした。
オーク父「いったい何の用だ。私は罪滅ぼしはしたはずだが」
オーク父はある程度人の言葉を理解できるため。捕らえた姫騎士を尋問役として数日間、姫騎士を問いただしていました。
なぜ自分たちを殺そうとするのか、といった質問をしても、「くっ、殺せ」としか言わない姫騎士が怖くなり、放免したのです。
それから城に戻った姫の母親は「捕虜ごっこ」が止められなくなり、オーク父を一年以上幽閉し、気が済むまで趣味にふけったのでした。
王はこれを見て見ぬふりをしましたが、可哀そうになり逃がしたのも国王だったのです。
オークに対する温情も、この過去があったが故でした。
オーク父「まさかまた姫騎士の病気が…」
連れていかれるという恐怖からオーク父は脂汗が止まらなくなりました。
従者「いえ、あなたは城に連れて行くと委縮してしまう。それでは都合が悪い」
従者は少年オークに向き直りました。
従者「少年、お父さんとお母さんを助けたいかね?」
オーク「困っているなら助けたいけど、何かあるの?」
従者「姫騎士さまと話し相手になってもらいたいのですよ」
その言葉を聞いて真っ先に反対したのは父オークでした。
オーク父「だめだ! こいつには人の言葉は教えていない」
従者「それにしては伝わっているようですが」
少年オークは父の読む新聞を度々盗み見ていて、少しだけなら理解がありました。
オーク「少しならわかるけど」
従者「それで十分。また来ますよ。明日の夕刻に出かける準備をしておいてください」
従者が出て行った扉を見ながら、オーク父は頭を抱えていました。
オーク「お父さん、どうしたの?」
オークは姫騎士という単語自体はわかっていないようでした。
オーク父「〈殺せ〉と会うことになるんだよ、オーク。私はお前が心配だ」
オーク父は息子を近くに呼んで抱きしめました。
それから数刻後、買物から帰ってきたオーク母は泣きながら、息子が出かける支度をしたのでした。
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