2: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2018/07/03(火) 00:01:59.62 ID:Wze3yOnD0
「芳乃はさ、何か欲しいもんとかある?」
唐突といえば唐突な質問に、彼女は目を丸くした。
「欲しいものでしてー?」
「うん。思い付くものがあれば言ってみてくれ」
改めて問われてみると芳乃は困り果てた。
無私無欲の権化のような子である。
長い髪を左右に揺らし、こっくりこっくり思索を巡らせて、やがて「ほー」と頭に電球を浮かべる。
「寮の雪隠(せっちん)のお電球が切れそうと、みくさんが仰っておりー」
「……いやそういうパブリックなものじゃなくて、個人的に欲しい奴は?」
ふむふむ、また頭を右に左に傾け、ぽんっと手を叩く。
「いつも買っているおせんべいのー、新しき味がしんはつばいとー」
「いやいやそういういつものでもなくて、なんていうか特別な……」
要領を得ない説明だとはわかっているが、本題をうまいこと避けるのにも限度がある。
芳乃の方もそろそろ訝しむ段に入った。こんな持って回った言い方をする俺が不思議なのだろう。
「そなたらしからぬ歯切れの悪さでしてー。何をお考えなのでしょー?」
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