132:以下、名無しに代わりましてジョーカーがお送りします ◆.jMGTy6iYI[saga]
2018/07/10(火) 09:51:45.73 ID:ROOZzIfp0
マンションの入口で女性を泣かせるという構図は非常によろしくない。
泣かせるつもりはなかったとはいえ、自分の言葉を聞いて泣いてしまったら、意図は関係なく泣かせたのと同義だ。
春は顔を見せられそうにないと言った。
なら彼女の望み通り、泣き顔を隠してあげるのがせめてもの贖いだろう。
ゆっくりと春の元へ歩み寄り、両手で優しく抱き寄せる。
一瞬驚いたように両肩が震えた春だったが、自分がそれ以上何もしない事がわかると胸元に頭を預けてきた。
ひとまず春の感情の昂ぶりが落ち着くのを待つとしよう。
春「…………………………穴があったら入りたい」
――どれくらい時間が経過しただろうか。しばらくして、泣いた影響か鼻声の春はそうポツリと呟いた。
蓮「ならもう少し抱き寄せた方がいい?」
春「……ううん、このままでいい。…………このままがいい」
俯いたまま言葉を地面へ落とす春。
顔を覆い隠していた春の掌は、いつの間にか自分の服の裾を軽く掴んでいた。
春「…………いま私、凄く恥ずかしい事言わなかったかな?」
蓮「? 男女が抱き締め合うのは恥ずかしい事なのか?」
春「……恥ずかしい事というか、なんて言えばいいのかな、とりあえず普通は恥じらいを覚えるものだと思うの」
蓮「そういうものなのか?」
春「……ふふっ、あなたってたまに予想の斜め上の反応するね」
春「…………うん。ありがとう、もう大丈夫。――あ、でも今の顔は見ないで欲しいから、後ろ向いて貰えると嬉しいかな」
なんとか落ち着きを取り戻した春だが、やはり顔を見られたくないようで、地面を向いたままそうお願いしてくる。
蓮「わかった」
春の要望に応える為に抱き寄せるのを辞めて後ろを向いた。
春「……、――っ!」
――その直後、背中に伝わる柔らかな衝撃と彼女の温もり。
反射的につい振り返りそうになったが、なんとか動きを制止させて前方へ向き直る。
春「……寂しくなったら、またこんな風に励ましてもらってもいいかな…?」
背中に身体を密着させながら語りかけてくる春。返す言葉は先程告げた言葉でいいだろう。
蓮「ああ。いつだって春を受け入れられる場所にいるから」
春「ありがとう。……その言葉、一生忘れないからね?」
囁くような声で告げた後、春は背中から離れ、小走りで足音と共に離れていく。
春「あなたに泣き腫らした顔なんて見せたくないから、部屋へはまた日を改めて招待するね」
春「それじゃあまた。おやすみなさい」
蓮「おやすみ」
足音が遠ざかっていくのを把握しながら、後ろをチラりと振り返れば春の姿はすっかり小さくなっていた。
自分もそろそろ自宅へ帰るとしよう。
等間隔で並ぶ街灯に照らされながら、自宅への帰路についた。
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