3: ◆E1jyq2RFLo
2018/06/25(月) 15:47:45.44 ID:cQPlCRYs0
「あー、その、悪かった。」
まずは謝る。サラリーマンの悲しい性分だ。
「いいですよ。これでちゃんと憶えてくれましたよね?」
「おう、憶えやすいからな。」
「自分の誕生日、忘れてたじゃないですか。」
今日のパーティは、サプライズ的なものだった。事務所のドアを開けた瞬間に鳴らされたクラッカーに目を丸くしてしまった。「お誕生日おめでとう」の声に、アイドル達のプロフィールを思い返してしまったのが本音だ。
そういえば去年の誕生日にあったものは、親からのメールとSNSのメッセージ、あとは溜まるばかりのメールマガジンくらいだったなぁ。仕事に夢中だったというのもあったが、年々そういう記念日に対する意識はすり減っている。
「フツーの一日なんです、誕生日なんて。プロデューサーさん自身が忘れちゃうくらい。
祝ったり、祝ってもらったりするから特別な日なように感じてしまうだけで。」
若さのわりには寂しい考え方だな、と思った。「ただ、」と続ける。
「プロデューサーさんの誕生日と同じだって知ったとき、なんだか運命的だなぁ、大切にしたいなぁ、なんて。
私とあなたしか知らない、あなたと"私"の誕生日。ステキじゃないですか?」
少しはにかんだような、くしゃっとした笑顔。"あなた"の笑顔なのか、それともあなたの笑顔なのか。
ただ、この瞬間だけは自分だけのものだと思いたかった。誕生日だし、少しくらいワガママなことを思っても許されるだろう。
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