9: ◆KWjQNDTan2[sage]
2018/06/20(水) 01:41:59.99 ID:NQFD6swr0
あなた(俺が宇田川巴という人を知ったのは、あるライブハウスでのことだった)
あなた(親友に誘われて、興味はあまりないけど顔を出した「CiRCLE」というライブハウス)
あなた(そいつが言うには『今かなり熱いバンド。あとメンバーがみんな可愛い』)
あなた(大層な言葉をやけに興奮した口調で言っていたが、その言葉はあまり俺の琴線に触れはしなかった。ただ、こいつがそこまで言うなら聞いてみるか、くらいの気持ちでいた)
あなた(所詮高校生のライブだ。それもガールズバンド)
あなた(どうせ小奇麗で歯の浮くような、恋がどうとか好きな人がどうとか、そんな歌詞を吐き出すだけのものだと思っていた)
あなた(……だが、それはものすごく失礼な印象だった)
「聞いて。あたしたちの歌を」
あなた(黒髪の一部に赤いメッシュを入れたボーカルの女の子。その子の凛とした声が会場に響く)
あなた(そしてその後に、ステージの最奥、ドラム担当の女の子が力強くスティックを叩き合わせ、始まりの音頭を取る)
あなた(その姿に目を奪われた)
あなた(情熱的な赤で綺麗に伸ばされた髪。気っ風のいい笑顔を浮かべて、細い腕に握られたスティックが鮮やかに動き回り、音を弾けさせる)
あなた(俺は音楽のことはあまり詳しくない。だからその演奏の上手い下手は分からない)
あなた(だが、彼女の演奏に、演奏する姿に、俺は魂を揺さぶられた)
あなた(『可愛い』や『綺麗』ではなく、汗を煌めかせながら一心不乱にドラムを叩く姿がただただ『カッコいい』)
あなた(このガールズバンド――アフターグロウの演奏が終わるまで、俺はドラムの女の子の姿から目が離せなかった)
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