鷺沢文香「SS的な、余りにSS的な」
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4: ◆FreegeF7ndth[saga]
2018/06/12(火) 17:57:11.81 ID:UvmTBEWao
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文香「透視図法で絵画を描くには……

   1、絵画を見る人の視点――目の位置――を1点に固定して想定し、
   2、それに合わせて消失点(「最後の晩餐」の場合は画面中央に1点)を画面中に置いて、
   3、消失点を基準に、見る人から遠いものは消失点のそばに描き入れ、
   4、見る人から近いものは消失点から離れた位置に描き入れる
   
   と……順序よくモノを並べて配置していかなければなりません」

P「絵画というより、算数や数学の図形問題みたいだよなぁ」

文香「……実は、物語の筋書きも同じなのです」

P「えっ」



文香「三幕構成も、それより古い『筋書き』の作り方も……読み手の視点――主観――を想定して、その主観に沿うように物語中で起きた出来事を順序よく並べていく……というお話の作り方は、透視図法から生まれた考え方なんです」

P「脚本の書き方が、絵画の遠近法から生まれただって!?」



文香「それを踏まえた上で……私は、SSとやらに『筋書き』は必ずしも不可欠ではない、と思います……筋のない話でも読者の心を動かせる、という点では、以下の坂口安吾の文章を参考にしてもらいたいです……」


> シャルル・ペロオの童話に「赤頭巾」という名高い話があります。既に御存じとは思いますが、荒筋を申上げますと、赤い頭巾をかぶっているので赤頭巾と呼ばれていた可愛い少女が、いつものように森のお婆さんを訪ねて行くと、狼がお婆さんに化けていて、赤頭巾をムシャムシャ食べてしまった、という話であります。まったく、ただ、それだけの話であります。
> 童話というものには大概教訓、モラル、というものが有るものですが、この童話には、それが全く欠けております。(中略)

>私達はいきなりそこで突き放されて、何か約束が違ったような感じで戸惑いしながら、しかし、思わず目を打たれて、プツンとちょん切られた空しい余白に、非常に静かな、しかも透明な、ひとつの切ない「ふるさと」を見ないでしょうか。(中略)

> 私は文学のふるさと、或いは人間のふるさとを、ここに見ます。文学はここから始まる――私は、そうも思います。
> アモラルな、この突き放した物語だけが文学だというのではありません。否、私はむしろ、このような物語を、それほど高く評価しません。なぜなら、ふるさとは我々のゆりかごではあるけれども、大人の仕事は、決してふるさとへ帰ることではないから。……
> だが、このふるさとの意識・自覚のないところに文学があろうとは思われない。文学のモラルも、その社会性も、このふるさとの上に生育したものでなければ、私は決して信用しない。そして、文学の批評も。私はそのように信じています。

※坂口安吾『文学のふるさと』 https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/44919_23669.html より


文香「安吾のいう『モラル』は、『筋書き』と言い換えてもよいでしょう。絵画や建築のような計算づくの筋書きがなくても……ただ、可愛そうだなとか、可愛いなとか、断片的なシーンだけで、読者の心を動かすことは可能だと思います……」



P「……文香の言う通り、文香の魅力を宣伝するためのSSなら、読者を「文香可愛い」と思わせればいいんだから、『筋書き』がなくてもなんとかなる気がするなぁ……」

文香「……『筋書き』があれば面白くなるのは確かでしょう。しかし、それにとらわれて書けないのでは困ります……」



P「でも、SSのSはStoryだからなぁ。『筋書き』のない話ってのは……」

文香「もしかすると、SSとは散文詩(さんぶんし)の略かもしれませんよ……? 散文詩なら、筋書きがなくても大丈夫ですよね……」

P「……楓さんみたいなことを言うのな、文香も」



文香「……どうして、オチで他のアイドルの名前が出てくるのですか……私のSSなのに、信じられません……っ」

P「ご、ごめんよ……」

文香「筋書きも何もあったものではありませんね……書き直してください」



1、文香「SSに筋書きなんてなくても大丈夫ですよ……」 終わり


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