15: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:51:02.90 ID:lFsgkv9uo
「じゃあ帰りますね」
恋人同士になって俺の部屋に通うようになっても今のところお泊まりはNGにしている。夜も遅いし送っていきたいのは山々だがパパラッチされたら致命的だ。寮からはそこまで距離が離れていないので、美穂はいつもそのまま1人で帰っている。美穂も制服の上に上着を着て眼鏡と帽子で変装をしているがそれでも気付く人は気付く。名残惜しいけど今日はお別れだ。
「また明日ですっ」
「ああ。気をつけて帰るんだよ? 寄り道はダメだからね」
「はいっ。帰ったらまたメールしますね」
美穂がマンションを出るのを見届けてソファに座る。さっきまでいた彼女の残り香が少しこそばゆい。
「やっぱり俺の方が恋しちゃってる、よなぁ」
好きだと始めに言ったのは美穂の方だった。だけど俺は初めから、彼女に心を奪われていた。プロデューサーとして採用されて研修を経て、1人アイドルを担当しなさいと上から命じられた俺は始めスカウト活動を行なった。道行く女の子たちの中で光るものを感じた子には積極的に声をかけた。時には通報されることもあったけど、今となれば笑い話になっている。会社には迷惑かけちゃったけど。
スカウト活動がうまくいかず養成所からアイドル候補生を引き入れる方針に転換した時、集めた資料の中で一番目を引いたのが他ならぬ美穂だった。本音を言うと、彼女以上のポテンシャルを持っていた子はたくさんいた。それでも俺は彼女に賭けたいと思った。言うなれば、運命を感じたんだ。それは直感だと思っていたけど本当は――。
「一目惚れだったんだなぁ……」
今なら胸を張って……張っちゃダメなんだけど言える。小日向美穂という女の子に恋をしたから、トップアイドルにしたいと思ったんだ。自分が好きな女の子を輝かせたいって思うのは自然なことだろうから。
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