67: ◆eBIiXi2191ZO[saga]
2018/11/17(土) 12:30:34.91 ID:hYXGsH5LO
「い、いえ! 私のほうこそ、とても楽しくて」
私はあわてて、返事をするのです。
「楓さんとこんなにお話ができて、お酒もご一緒できるなんて……なんだか、夢のようです」
偶然。ふいに。たまたま。
私が今、この時間を過ごしているのは、本当に偶然で。でも、かけがえのないもので。
「私こそ、ありがとうございました」
私は、お礼を返しました。
「私、思うんです」
「なにを、ですか?」
「私、まだ歌織さんに、ご縁のお礼、返せていないなあ、って」
幾分かほろ酔いの楓さんが、ゆったりと言います。
ご縁のお礼だなんて……私のほうこそ、お返ししたいのに。
「ですから、せめて」
楓さんの瞳が、私を捉えます。
「歌で、お返ししますね」
目を伏せて。すう、と。
息の音。
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