8:TheNesandazo
2018/05/16(水) 23:47:11.73 ID:t/UODRmM0
昼頃に商店街へ買い物へ行き、夕食の食材の買い出しを終えた優はこれから来るだろう許嫁の女性に心を躍らせながら夕食を作っていた。
「どんな人が来るのかな。」
今の時代、許嫁なんてアニメや漫画のような古臭い手法を取るのだ。それなりに良いところの出身であると優は予想する。最近友人から借りたものでいうと、
金髪ツンデレお嬢様や和服のお淑やか系お嬢様がヒロインだった漫画が頭を過ぎるのだが、あくまであれはフィクションであると思いながら料理をする手を
進めていく。
彼自身今まで色恋沙汰に巻き込まれることがなかったこと、そして気の優しい性格をしていることから先述したもののうちどちらかと言えば、お淑やかな性格
をしている人がいいなと思う。そのまま彼は頭の中で自分の女性の理想像を作り上げていく。
「やっぱり黒髪ロングが王道かな・・・。」
如何せん自分の周りには変な髪色の人が多い。高校に入ってからの友人となった2人は銀髪と赤みがかった茶髪であり、後者はまだ染めたというのは分かるのだ
が、銀髪の彼女はどうしてその色なんだろうか。以前遺伝によるものかと尋ねてみたときに
『気づいたらなってた。アッハハハハハハ。』
と、返されたのは記憶に新しい。着々と優の頭の中で許嫁の理想像が出来上がっていくのと並行して料理は出来上がっていく。火の通り具合を確認していると、
玄関についているインターフォンがリビングに響く。
一気に緊張が優の心を満たし、溢れ出そうになる。震える手をもう片方の手で抑えながら火を止める。もう完全に火は通ったので後はさらに盛り付けるだけ
である。すぐさまエプロンを冷蔵庫にマグネットでくっついているフックに引っ掛けて玄関の方へと向かう。途中テーブルの脚に躓いて転びそうになるのだが
足を前に出して体制を整え直す。鳴り響く心臓の鼓動を抑えつつ、玄関の扉を開ける。
「・・・。」
扉を開けた先には一人の女の子がキャリーバックを片手に立っていた。異性との関わりが豊富だったとは言えない優は、彼女をどこかで見たことがあるよう
な気がするという考えを放棄して、何かかける言葉を考える。
「や、にゃあこにちわ。」
「・・・」
噛んだ、思いっきり。緊張で呂律が回っていないことに恥ずかしさで顔が赤く染まる。何でこんなことになったのか・・・おじいちゃんのせいだと責任転嫁を
しようとするが、やっぱり脳の回転がいつもの7割増しでアホになってしまっている。こちらをジトついた赤い瞳で見てくる彼女はついにしびれを切らしたのか、
その長い黒髪を揺らして口を開いた。
「いい加減家に入れてもらえないかしら、庶民。」
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