53: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2018/06/13(水) 03:25:29.67 ID:Z8FfJGYq0
「戻ったス〜」
何事もなく戻ってきたフェイは、何かの本を持って現れる。平山は簡単なジェスチャーだけして、視線はそのまま外を見たまま。その態度に慣れているのか、フェイはそのまま彼女の横まで近づいた。
「何かあったか?」
「特にはないス。一応集めてなかったっぽい経済雑誌あったから持ってきたスよ」
ご苦労という言葉はあっても、警戒した様子を崩さない平山は相変わらず外を見たままだ。もちろん、不愛想な類の態度だが、その側に軽く休むためのイスとテーブルが置かれていて、テーブルには携帯できる食事と飲み物が置かれている。平山がフェイの為に準備していたもの。
こういう気遣いが出来る人なのになぁと、口には出さないが思うフェイはその雑誌を同じテーブルに置いて、遅い食事をとることにした。
「雨、止みそうにないス?」
「…。多分な、軽く濡れても大丈夫そうな物資を選定するしかなさそうだ」
聞こえてくるのは、雨音とフェイの食事の音だけ。いつもなら聞こえる死のうめき声(おと)は雨に覆い隠され、優しい静寂の中にいる気分に浸れる。
本当に全て、流されればいいのにと、フェイは少し思った。
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