321:ブレイクタイムでもなく本編に関わりは多分ないと思う幕間[saga]
2019/08/31(土) 00:57:11.76 ID:TlZ7QKUiO
『その剣先を継ぐ者』
祖父は最強の剣の使い手と聞いて、私は育った。
曰く、無音の剣。曰く、無空の剣。その剣先があったと理解するのは、その後を通った形跡でしかわからない。
その話を、それぞれがそれぞれ。敬意、畏怖、心酔、惚気、そう言ったものを交えて聞かされた私が、憧れないというのはおそらくなかったと思う。
ただ、形容に合わせて話すなら、それは無形の憧れだった。すでに祖父はそばにはいなかった。口伝えだけの中にだけ存在する人物、というわけでもない。
その剣先によって救われた人々がたくさんいたからこそ、多くの人の話を聞くことができた。
話によるなら、祖父はマメな人で日々を日記で残していたようだが、家族は否定した。しかし、今あるのは別にして、あったのは事実だと私は思う。
私と祖父を繋ぐのは、その口伝えだけ。仮に、仮に会えたとしたら、その証明はどうすればいいのかということでもある。
会えるかの話になるのは、なぜかと言われたら、祖父は行方不明だからだ。それこそ、そのことは誰も触れない。
憧れもあり、そして謎が残る存在に私は魅了された。いや、今もそうだ。
だからこそ私は今、出る準備の最後に剣を手にしている。その存在になるため、その存在を知るために。
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