八幡「入学式の日に犬が飛んできたから蹴り返した話」
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166:名無しNIPPER
2018/05/16(水) 18:05:38.39 ID:N+ZlHX8zO
「一体誰がそんなことを」

 わたしがようやく絞り出せた言葉は、そんな意味のない台詞だった。判明していないのだから、この場にはぶつけようもない雰囲気が漂っているのだ。

 案の定、恵美さんは静かに首を振るだけだった。

 わたしは倒れている琴葉さんの脇を見た。そこには開封され、食べかけのチョコレートが顔を出している。見ただけではもちろん普通のチョコレート。ただし、これが件の凶器だろう。

 わたしは手を伸ばしかけたが、それは恵美さんに阻まれてしまった。

「鑑識が来るまで待ちな」

 数分すると、恵美さんが言ったように控え室に入ってくる者があった。

 先頭の風花さんが真っすぐこちらへ向かってくる。わたしは黙って道を開けた。風花さんは頷いてみせると、慣れた手つきで琴葉さんの首筋や口に手をあてて診察を始めた。

 風花さんの後ろからは美奈子さんがやってきて、机の上に置かれている例の開封済みのチョコレートへと手を伸ばした。白い手袋をして慎重に検分し、恵美さんの許可を取って少しだけ切り取った。そしてみんなが見守る中、意を決して口へと運んだ。

「間違いない、食塩ですね」

 険しい顔で断言する。チョコレートは元の位置に戻され、わたしたちは一旦部屋のすみに追いやられた。亜利沙さんが事件の現場の状況をカメラに収めるのを邪魔しないためにだ。

 一通り現場の調査が終わっても、わたしを含めた野次馬連中はまたテーブル付近に集まろうとはしなかった。



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