橘ありす「インタスグラム、ですか?」
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2: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 22:37:35.20 ID:0nbIURfu0
「ですからどうして駄目なんですか! 納得のいく説明を求めます!」

 タブレットを握りしめた腕をぴんと伸ばし、椅子に座っている僕を少しだけ見下ろすような姿で、彼女が怒っている。

 僕を貫いている視線には、彼女らしい強い意思がここぞとばかりにぎゅっと詰め込まれ、その話し方には、彼女を良く知る者であれば疑いはしない聡明さが感じられる。

 その歳不相応の説得力に、僕は参ってしまっていた。

 彼女との付き合いも長いものなので、扱いは手慣れたものだと自負していたのだけど、どうやらその認識は改めなければいけないようだ。

 最近はだいぶご無沙汰ではあるが、出会ったばかりの頃の彼女、橘ありすはいつだってこんな調子だった。

 僕が無い知恵をひねり出して考えたプロデュース方針やレッスンメニューに、一つ一つ意味や目的を尋ねてきて、それが自分の意にそぐわないものであれば真っ向から否定して突っかかって来る。

 彼女は、そんな女の子であった。

 時には僕が考えたものよりもよほど効果的な案を携えてくるので、大人としての立場もプライドもあったものではい。

 そして、僕は彼女のそういった所に魅力を感じて惚れ込んでいた。

 だから、こうなる度に頭を悩ませている半面で楽しい気分でいっぱいになってしまって、他の仕事を全て投げ出して彼女との議論に華を咲かせがちになっているものなのだから、いつも僕たちは千川さんに目をつけられている。

「駄目なものは駄目」

 とはいえ、今回ばかりは彼女の要望に歩み寄るわけにはいかなかった。

 彼女の言い分も気持ちも十分に理解しているつもりだし、彼女の言うとおりに任せてみてもきっと良い物はできるだろうという確信もある。

 それでも、だ。

「私のSNS活動を解禁してください!」

「それでもそれはいけない。 だって前に炎上しかけたでしょ」

 頑なに彼女の、ボクの担当アイドルである橘ありすからの抗議を珍しくも一歩も譲らずに否定し続けているのは、これが全てだった。
 



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