137: ◆PL.V193blo[sage saga]
2018/04/23(月) 22:13:22.27 ID:uqQOtxCi0
「ねえ、お願いがあるんです。」
「なんですか?」
背中に手を回して、抱き締めた。
きっと、私はこうしたくて。
「私の名前、呼んで下さい。」
その声に、呼んでほしくて。
「楓さん。」
「もう一度。」
「楓さん。」
「はい。」
私は、生まれてきたような気がします。
「貴方に名前を、呼んでもらうのが大好きです。」
もう一度、貴方を見る。
僕も、と。貴方が言った。
「貴方の名前を呼びたくて、貴方の歌が聴きたくて。きっと、ここまで来たんです。」
止まることのない涙を、彼の親指は、もう一度、拭った。
この心地よさを、ずーっと前から、知っていたような気がするのは。
たぶん、私の中に、涙を拭いてくれるこの優しい指を、愛おしくて愛おしくてたまらなくて想い続けた、遠い日の誰かが生きているのだと思った。
了
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