15: ◆.s5ziYqd8k
2018/04/16(月) 22:14:30.52 ID:xaEfnyHJ0
ガイドさんはそれきり悩ましげに溜息を吐いて、背中を叩くやよいを気にもしていない。
……時々むせてるというか、痛そうにはしてるけど。
窓の外は茜色の空。雲は赤と黒のグラデーションなのに凄く綺麗。
「あの、外が夕方みたいなんですけど、時間は進まないんじゃなかったんでしょうか」
「お? ほんとだ。おいおいどういうこったね」
だからね、とガイドさんは頭を描いて言った。
……ここは別に時間が過ぎないわけじゃなくて、物が経年劣化したりしないようにできているらしい。
「ガイドのくせに説明が下手くそだねぇ。だから女に振られるんだ」
ガイドさんは、盛大に落ち込んでしまった。
「ええと、あの、そろそろ帰らないといけないと思うんです。お話はまた明日でいいでしょうか」
やよいの目が私を貫いた。
その色は驚きの色だ。私だって、たぶん鏡を見たら同じ目をしているはず。
……私が、初めての人に向ける言葉じゃなかったから。
前髪が揺れる。カーテンのように、私の視界の上半分は暗闇が包んでくれる。
それから宿に向かうまで、私の頬はきっと、熱を帯びていた。
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