10: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/16(月) 00:07:09.72 ID:wXMMdwi10
かすかに聞こえたのは、多分笑い声になり損ねた鼻息だろう。
プロデューサーさんは相変わらずあたしに横顔を向けたまま。
右手は電卓の上でカタカタ、左手は積み上げられた書類の山から引っ張り出したファイルを忙しそうにめくっている。
11: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/16(月) 00:07:53.28 ID:wXMMdwi10
「プロデューサーさんは中華がお好み?」
「いや、いかにも身体に良くない量と味付けが食欲をそそる」
12: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/16(月) 00:08:23.27 ID:wXMMdwi10
「最悪やわ」
わざとちょっとキツい感じで、口を尖らせる。
13: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/16(月) 00:09:09.32 ID:wXMMdwi10
あら、やっぱりいいこと聞いたかもしれないな。
慌てふためくプロデューサーさんを見るのなんて、いつ以来だろう。
どーしよっかなー、と鼻歌交じりに足を振るあたしをよそに、プロデューサーさんは積み上げられていたファイルをいくつかどさどさとちひろさんの机に押しのけている。
14: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/16(月) 00:09:54.23 ID:wXMMdwi10
「で?」
「え?」
15: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/16(月) 00:10:43.17 ID:wXMMdwi10
「……あたし、そんなに分かりやすかった?」
「もう長い付き合いだからな。だいたいのことならお見通しだ。昨日の晩ご飯とか」
16: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/16(月) 00:11:30.70 ID:wXMMdwi10
んー、嬉しい。
承認欲求とはまた違う、誰かがあたしのことを分かってくれているという喜び。
しかもそれは、1番分かっていてほしい人。
17: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/16(月) 00:12:08.55 ID:wXMMdwi10
「あたしさ、1番になったやん?」
「なったなあ」
18: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/16(月) 00:12:49.58 ID:wXMMdwi10
「……それでね」
「おう」
19: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/16(月) 00:13:32.83 ID:wXMMdwi10
それまで阿吽の呼吸で返ってきていたプロデューサーさんの相槌が、ぴたりと途絶えた。
やっぱり怒られるかも、とおそるおそる顔を上げて、あたしは思わず息を呑んだ。
怒られる、なんて暢気なものじゃない。
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