53: ◆eUYYCXmg66AS[saga]
2018/04/18(水) 21:19:10.38 ID:LPH6pU+so
言われてやっと気がついた、雫が頬を伝っているのに。
視界が歪んでなでしこの顔がよく見えない。
目元は熱を持ち、温かい涙があふれている。
何も見えないけれど、なでしこが涙をぬぐってくれたのは分かった。
「……わかるよ、リンちゃん。選べないんだよね?」
母親が幼い子供に話しかけるように、私にささやきかける。
「わたしも子供のころ、欲しいおもちゃが二つあって、選ばなきゃいけなかったんだけど……。選べなくて泣き出しちゃった」
「結局、お母さんが二つとも買ってくれたんだけどね」
「えへへ」と笑うなでしこを見ながら『違うんだ』と心の中でつぶやいた。
私が今思っているのは……、その二つじゃなくて。
なでしこと――
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