9: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/09(月) 01:18:21.60 ID:5Tf9w7wF0
びゅうと吹き込んできた春の匂いが、あたしの髪をくすぐる。
そろそろ短くしてもいいかな。卒業だし。
背中をかすかに押しているのは、カーテン、それとも恋の気配?
10: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/09(月) 22:58:45.02 ID:5Tf9w7wF0
●
早かった春は、あっという間に終わってしまった。
11: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/09(月) 23:00:54.22 ID:5Tf9w7wF0
友達はみんな高校生の肩書きを返上して、あちこちに散らばって華の大学生活というやつを謳歌している。
ユカちゃんも、青子も。
遅刻魔ミッコなんて九州に行ってしまったと聞いた。
12: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/09(月) 23:01:50.35 ID:5Tf9w7wF0
あたし? あたしは……。
華の実家暮らしだ。
高卒、家事手伝い。
13: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/10(火) 23:47:47.94 ID:LKu2ejSE0
●
「周子! ぼけっとしてんとちゃうよ!」
14: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/10(火) 23:49:26.71 ID:LKu2ejSE0
ベッドでごろりと寝返りを打って、両足ばたばた。
「いーやーやー。お見合いなんて……」
15: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/10(火) 23:50:31.26 ID:LKu2ejSE0
「ええー」
「ええとちゃう!」
16: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/10(火) 23:51:22.16 ID:LKu2ejSE0
「昼間っからごろごろしてないで、ちょっとは将来のことを考えなさい! 高校出たらあっという間よ、時間は待ってくれへんのよ!」
開いたときと同じ音を立てて、障子が閉まる。
17: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/10(火) 23:52:07.79 ID:LKu2ejSE0
「うええー……」
ばたりと布団に倒れ込む。
18: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/10(火) 23:52:56.10 ID:LKu2ejSE0
中に入っているのは、大人の履歴書。
いわゆる、釣書、という奴だ。
会ったこともない男の人の顔写真がついた紙が、1枚、2枚、3枚、4枚。
19: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/10(火) 23:53:40.07 ID:LKu2ejSE0
5枚目。
最後の1枚をじっと見る。
いつ撮影されたのかも覚えがない、和装の自分が微笑んでいる。
82Res/29.24 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20