49: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:09:47.09 ID:x9sd9kyc0
「怪我したわけじゃないのに、泣いてたろ」
少し間を置いて、男の人は言葉を続ける。
50: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:10:22.91 ID:x9sd9kyc0
「別に、なんもないよ?」
返事してから後悔した。
51: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:10:51.84 ID:x9sd9kyc0
「親御さんと喧嘩したとか」
ぎくっ。
52: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:11:41.82 ID:x9sd9kyc0
「きみくらいの年の頃に1人で泣きたくなるようなことって、ペットが死んだとか、親にきついこと言われたときだったかなあって」
おお、と思わず感嘆の声を漏らしてしまった。
53: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:12:11.95 ID:x9sd9kyc0
「あのねえ」
気付けば、言葉が口から滑り出てきていた。
54: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:12:55.16 ID:x9sd9kyc0
顔を見ながら話すのはとても恥ずかしかったので、あくまで独り言のように。
洛中の街明かりが薄ぼんやりと滲む宵闇と会話する。
55: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:13:44.24 ID:x9sd9kyc0
「今は家の手伝いをしてるんだけどさ。それは小さい頃から当たり前のようにやり続けてたことで、あたしがやりたいことなのかなと思うと違う気もするんだよね」
嘘だ。
56: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:14:30.89 ID:x9sd9kyc0
「いざ将来のことを自分で考えろって言われてもさ。一体全体どうしたらいいのかな。考えてみても、あたし分からないんだ」
本当のことなんか言えっこなかった。
57: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:15:18.45 ID:x9sd9kyc0
「どうしよう」
落ち着こうと口に当てたコーヒー缶は空っぽだった。
58: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:16:12.27 ID:x9sd9kyc0
はあ、とため息を1つ。
上を向いて、大きく息を吸って、袖口で目を拭う。
59: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:16:38.41 ID:x9sd9kyc0
「よし、そろそろ帰らないとまた怒られちゃう。格好悪いとこ見せちゃったね、内緒やで?」
男の人がハンカチを受け取るや否や、小走りでその場を後にしようとする。
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