175:>>1だよ[sage saga]
2018/04/26(木) 00:55:31.19 ID:KycgfB6a0
あいにく、今日の天気予報は雨マーク。
しかもその勢いが尋常じゃなく、なんでも近年稀に見る記録的豪雨らしい事を後から知った。
つまり、今日の冒険はお休みという事だ。
結露によってくもりガラスのようになった窓からは、大きな雨粒達が踊るように目まぐるしく流れていく。
勿論天気予報なんて誰も見てなかったので、急いで近くのお洒落な喫茶店に駆け込んだ、というのが事の経緯。
窓を叩く雨音を後ろに、洋菓子と紅茶に舌鼓を打つ。
隣に座り、さっきから抹茶ロールケーキに夢中なけーちゃんに味を聞いてみる。
「けーちゃん、美味しい?」
「うん!」
かわいい。もうこれは説明不要な世界の真理。対面に座るピジョンも大層癒された目をしている気がする。
金に見えるかなり明るめの茶髪ロング、それも姫カット。髪型だけじゃなく、元々大人っぽかったのにユンゲラーに進化して雰囲気だけでなく身体もちゃんと大人に一歩近づいたけーちゃん。
だというのに、こころなしかケーシィだった時よりも精神は幼くなっている気がする。天真爛漫を地で行く、素直で純粋な良い娘。あいくるしくてしょうがない。
「けーちゃん、私のケーキも食べる? 美味しいよ〜」
「お母さん、良いの……?」
「うん。けーちゃんが美味しそうに食べてるの好きだから」
あっこらこら。ロールケーキのクリームが口に付いちゃってるから拭いてからにしなさい。
ほら、じっとして動かないで。拭いてあげるから。
何故か目も閉じてじっとするけーちゃんの口元からクリームを綺麗に拭き取ってあげる。唇ぷるっぷるだな、女の子の体って神秘的すぎる。
「お父さん、ありがとう」
むしろこっちがありがとうなんだよなあ……。見た目年齢が自分より大分年上なお姉さんの娘っていう、ちょっと何言ってるのか分からない状態のけーちゃんとの関係は思ってたよりも大分心地良い。うざったい程猫可愛がりしちゃってるのは自覚してるけど、もっと世話を焼かせてくれ。
「けーちゃんと2人で食べて? はい、あーん」
気付けばガトーショコラを銀色のフォークに刺して、食べさせるための恰好で構えているピジョン。大変素晴らしい口角の緩み具合だと思います。そのほにゃっとした笑顔世界一かわいいぞ。
「……ちょっと恥ずかしい」
「私も恥ずかしい〜」
「最近すぐ嘘付きやがって」
「最近すぐ嘘がバレちゃうね〜。嬉し恥ずかしだ」
ピジョンという女の娘は、基本的にあまり動じない娘だ。口では怖いだの恥ずかしいだの言うし表情もコロコロ変わる(大変かわいい)が、実のところ基本的には常に平常心な事が多い。夏の向日葵のような微笑を携えたまま、どこか冷静で物事を俯瞰して捉えていたりもする。
だから少し、ピジョンの恥ずかしがる顔が見たくなった。
パクッ
「俺のケーキも結構美味しいんだ。はい、あーん」
「本当? いただきま〜す……うん、美味しい!」
俺の企みはあっさりと失敗した。自分が恥ずかしい事は相手も恥ずかしいと感じる筈、そういう普通の価値観はふわふわマイペースなピジョンには通用しなかった。薄々こうなるかもと分かってはいても少しだけ悔しい。
「まあ、ピジョンが美味しそうに食べてるの見るのも好きだからいいんだけどさ……」
「……えっ?……そ、そっか、ふーん……レッド君って、時々そういう所あるよね。ふふ」
えっなにが。そんな恥ずかしがる程変な事行ってないぞ俺。けーちゃんなんか知ってる?
「……知らない♪ ねー?」
「ね〜?」
「えっおいハブりかよ! けーちゃんまで酷いぞ!」
223Res/142.68 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20