115:>>110 流石に草[saga]
2018/04/15(日) 17:30:51.45 ID:ps1IjEnw0
迸る、眩い程の光の奔流。それは有史以前、気の遠くなる程の遠い昔から繰り返されてきた、巨大な生命エネルギーの発露。環境に適応するため、形質そのものが変化していく。
……人はそれを、進化と呼んだ。
「─────!」
明滅する光から姿を表したケーシィは、いや、ユンゲラーはまた更に大人っぽくなっていた。金色の姫カットロングヘアにダボッとしたオーバーサイズパーカー、ゴツゴツしたブーツという出で立ちは変わらないが、スタイルの良さはそのままに身長が伸びた。背伸びした中学生くらいから、現在は高校生か大学生くらいに見える。以前は服装に対して幼すぎた印象があったが、お洒落なコーデに成長が追い付き全体のシルエットはより妖艶に。額の小さな星形フェイスペイントも主張しすぎず、適度なアクセントとなっている。
「……8秒、貴方をこの場から消滅させるまで、それで十分」
そう滔々と、セクシーな笑みを浮かべ、ユンゲラーはどこからか取り出したスプーンをマチスのライチュウに向ける。
ライチュウはケーシィが驚異の肉弾戦でピカチュウを撃破してからというもの、言いようのない不安に似た感情を抱えていた。このケーシィ、何かがおかしい。そもそもケーシィとは特殊攻撃、即ち念力だとか超能力の類に特化したエスパーポケモン、本来であれば物理攻撃や至近距離での肉弾戦など、門外漢な筈なのだ。ケーシィがしてきた行為は、細身な女性が相撲大会で無双しているようなもの。疑念を抱いて当然と言える。そんなケーシィがユンゲラーへと進化した。どんな奇想天外を放つのか、想像さえ出来なかった。
不安は、ほんの少しの気の緩みへ。生まれた隙は、どうしようもなくライチュウの足をすくった。
「……終わり」
ユンゲラーが繰り出したのは、ただのスプーン曲げ。しかし、この場に誰もそれを認識出来る者はいなかった。不意に、ライチュウは”消滅”したのだ。何の前触れもなく、何も残さず、フィールドから姿を消した。あるのは、ユンゲラーが片手でクイっと曲げた金属製のスプーンだけ。手元から落とされたそれは、甲高い音を立てて地面を何度か跳ね、やがてライチュウと同じように消えた。
「……ライチュウ戦闘不能。勝者、マサラタウンのレッド!」
ただ茫然と立ち尽くすマチス。そのマチスの作業着のようなズボンの内ポケットの中で、立て続けに倒されたピカチュウとライチュウが目を回している。隣のピジョンは目をまん丸にしてユンゲラーの方を眺め、当事者たるユンゲラーはいつもの笑みでマイペースに俺とピジョンに手を振っている。
これは、とんでもない眠れる獅子を起こしてしまったのかもしれない。故意にではないにせよ今まで封じられていた超能力を進化によって解放された時、抑圧されていた能力は攻撃技でない技さえ攻撃に変貌させてしまった。今の技はスプーン曲げとテレポート、サイコキネシスをほぼ同時に発動させていたようなもの。
「けーちゃん、すごい、凄いよ〜!」
「……わっ、お母さん、くすぐったいってば……♪」
すすす、と寄ってきて無邪気にピジョンに撫でられているこの娘は、元々の適性による超強力な特殊攻撃とかなりの素早さはもとより、弱点の物理攻撃手段の乏しさと耐性の脆ささえ克服している。要は、先行できるし殴れるし魔法も撃てるオールラウンダーなジョブになったということ。もうユンゲラー1人でよくね?
「月並みな言葉だけど……ユンゲラー、綺麗になったね。素敵だったよ」
「……!お父さん……!」
「ああっ! けーちゃんだけズルい! 私も〜」
身体にズシリと響く、ピジョンとユンゲラー2人分の重み。高校生くらいのお洒落な女の娘2人組に抱き着かれて幸せではあるのだけど、それよりもケーシィ、今はユンゲラーのあまりの変貌ぶりに今は割とそれどころじゃない。現状この娘弱点なくね? たくましい娘に育ってお父さん嬉しいよ。さり気にピジョンの時みたいに身長もあっさり抜かされてしまったし。まだ少し幼さが残るけど、綺麗なお姉さん2人と旅してる10歳ショタというヤバみ。
まあでも、今は。
「お父さんもお母さんも喜んでくれてる……良かった……!」
「本当に良い娘だ……よしよし」
愛娘の勝利を純粋に喜んでもいいのかもしれない。
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