38: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:02:17.63 ID:X17K8DuQ0
「……忍?」
顔だけそちらを向けると、忍はいつもの雰囲気ではないことがすぐに分かった。
力の入ってない身体、悔しさを見せる表情、濁ったような瞳の光、そして目元の赤。
忍は制服のままずかずかと音楽室に入ってくると、僕の横を通り過ぎた。
そしてそのままいつものスペースの真ん中に座り込んで、俯いて黙ってしまった。
僕の不安はさらに大きくなる。なんて声をかけていいのかまったく分からない。
あれでもこれでもないと脳内でシミュレーションを繰り返して、長い時間が消えていく。
言葉はふいに忍の方から発せられた。
「……さっきの曲」
「ん、ん?」
「好きなの? 練習中にも何度か聞いたけど」
「そうだね」
なんてことない会話のはずなのに、忍の声はほとんど聞こえないほど小さかった。
いつもやる気の忍はどこへいったんだよ。
なんでか分かんないけれど、僕はできれば君に笑っていて欲しいんだよ。
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