912: ◆DAKIMApJGg[saga sage]
2022/06/14(火) 22:05:27.80 ID:D3bsucXpo
「ご飯にするか?お風呂にするか?」
「え?え?」
自分を選択肢に含めないのが辻垣内智葉の奥ゆかしさというものだ
あまりの嬉しさに目の前の少年が感激のあまり目を白黒させているのも当然だろう
長野から東京に出てきての一人きりの下宿生活
食生活が偏ってしまっているのは確認済みだがしかたないだろう
男の心を掴むにはまずは胃袋から
憧れとする良妻賢母には料理の腕は不可欠なのだ
エビが好きなことは調査済みだ
疲れて帰ってくる旦那様を好物でもてなすのはまさに新妻の鑑といえる
ただし辻垣内智葉には盲点があった
目の前の少年が困惑している理由が違うのだ
朝ちゃんと戸締まりをして出かけた我が家
そこに先輩がいて夕食と風呂の準備をしていたとあれば恐怖以外のなにものでもない
『なぜか』辻垣内智葉が持っていた合鍵
その入手方法は大きな声はいえないし知らないほうがいいこともある
目の前に満面の笑みを浮かべたエプロン姿の先輩
このときほど女性の笑顔に恐怖を覚えたことはないだろう
「えっと……ご飯で」
「わかった着替えを済ませたら座って待っててくれ」
せめて死ぬときはお腹いっぱいでありたい
そんな本能めいた答えは正解だったらしい
良妻賢母を標榜する智葉の料理は美味しかったはずだが京太郎が味わう余裕がなかったのはしかたない
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