10: ◆7OUWtrrklk[saga]
2018/03/22(木) 17:54:00.23 ID:i93qXE2v0
今、曙は提督と向かい合うように膝に座っている。
心臓は今にも破裂しそうにばくばくと脈打っており、こんなに緊張したのは生まれて初めてだった。
たぶん初めて戦場にに立った時よりも、初めて敵を轟沈させた時よりも緊張している。
提督「……曙は小さいな」
曙「……そっちがデカすぎるのよ、クソ提督」
提督「……そうかもな」
そう言ってぎゅうっ、と提督は曙を一層強く、しかし優しく抱きしめた。
思わず声が出そうになるのを必死にこらえる。
自分の手は提督の背に回しているけれど手が届かない。それだけ提督は大きいのだ。
それだけ提督は自分たちを背負ってくれているのだ。
曙(……叢雲には悪いけど、私にだってこうやって提督を癒せるんだから……)
前だって別に提督から無理に迫られたわけじゃない。でも初めてで、流石に恥ずかしすぎたから手を握るしかできなかったのだ。
……曙がこの提督の癖を知ったのは全くの偶然だった。
大規模作戦の前夜、緊張で眠れず、無性に提督の顔を見たくなって司令室に行って……叢雲が提督を癒している最中を目撃してしまって、自分が勘違いしてその場に乱入して、意味を知った。
叢雲『別に私は嫌じゃないわ。提督が提督でいられるなら私はなんだってするわよ。そりゃ少しは恥ずかしいけど……外野からとやかく言われる筋合いはないわね』
叢雲『そんなに言うんだったら曙、あなたも提督を癒す? 別に強要しているわけじゃないわ。他にも二人いるわけだし別にしたくないならしないでいいのよ。ただ、このことは他言無用よ。言った場合は、私が全力であなたを潰すわ』
その時は断った。だが自分の部屋に帰って布団にくるまって寝ようとすると、その瞬間がまぶたの裏に映って脳裏から離れないのだ。
だから今、私はこうしている。他でもない自分の意志で。
あの映像を自分の姿に重ねるようになれるまではまだ時間がかかりそうだけれど。
曙「……もっと」
提督「ん?」
曙「……もっと、強くしてもいいわよ。疲れてるんでしょ? 精一杯抱きしめて疲れをとりなさいよ、この……クソ提督」
いつかはあたしだって叢雲よりも提督を癒させられるように、私は精一杯腕に力を込めた。
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