106:名無しNIPPER[saga]
2018/03/23(金) 22:49:40.28 ID:aN8X74Oh0
3の処理を行います
僕はその臭いを振り払うように,かぶりを振った.
考えすぎなのだ,この仕事を滑らかに終えるには,男仁さんが言っていたように僕はロボットになるべきだ.
男仁さんから,すこし重くなったアタッシュケースを2つ受け取り,出発の準備をする.
その間に一つ印象的だったことがある.車いすのひじ掛けに置かれた猿山さんの手は,スーツ姿の男によって握りしめていた.厳しい表情の男に対する彼女の
憐れむような表情.あるいはどうにもならないのだと諭しているような雰囲気が,彼女らをこの場から孤立化させている.
それから,彼女らに付き添われて,さきほどの従業員用出入り口へ向かった.
形式ばった礼を言って,立ち去ろうとした男仁さんに,スーツ姿の男は威圧するように言った.
「例え,あなたができなくても,他の方でできるという人はいるんだ.
もう協力することはないと思ってほしい」
男仁さんは,肩を竦めた.
「構いません.ですが,勢い余って彼女の命を縮めることにならないよう,ご考慮ください」
意味を成さない喚き声を上げた男だったが,隣にいる猿山さんを気遣ってかそれ以上は何も言わなかった.
一方で猿山さんは最初に会った時と同じ調子で,別れを告げた.
「おにさん,ももちさん.どうかお元気で」
急かすように男が彼女を扉の奥へ運ぶ前に,彼女がこちらを見て唇を動かした.
即座にPAIが読み取ってくれる.
PAI: 『SADに気を付けて』,誰に向けられた言葉なのかは,分かりかねます
ユウマ: SADって何を指しているんだろう?
PAI:いくつか候補は考えられますが,情報不足です.情報が出そろい次第,報告いたします
ユウマ: 頼む
午後から天気が崩れるとPAIは言っていた.それまでに終わればいいのだが.
147Res/81.02 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20