星梨花「試されている迷路の中」
1- 20
10: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:26:59.78 ID:l4IqRebF0
 それからは静香さん主導の下、ユニット活動が始まりました。歌やダンス、プロモーションなど、前の時と同じように忙しい日々を過ごしていきました。残念ながらこれらのことに関する記憶は都合よく残っているわけではなく、私は前回と同様に一から必死に覚えていきました。

 きっとこのやり直しは神様がくれたチャンスなんです。前回は私の実力不足で皆さんにご迷惑をおかけしたので、私は仕事と学校以外、さらには睡眠を削ってまでレッスンに明け暮れました。ちょっとしんどいけど、これでライブが無事に成功するならこれでいいよね。



11: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:28:03.89 ID:l4IqRebF0
 そうして月日は流れ、ライブ一週間前。最後の全体練習が行われようとしています。これまで、志保さんも私が原因で怒ったりすることはありませんでした。今回こそいけると、私は手ごたえを持っていました。

「ねぇ、星梨花」

 志保さんが心配そうな顔で私に尋ねます。静香さんも茜さんも麗花さんも同じような表情で私を見つめていました。
以下略 AAS



12: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:28:40.18 ID:l4IqRebF0
 その十分後、私は過労で倒れて救急車で運ばれました。診断結果は一週間以上安静。公演は中止となりました。それ以上は覚えていません。


13: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:29:28.07 ID:l4IqRebF0

 強烈な不快感と共に、私は自分のベッドで目覚めました。確か昨日は病院のベッドで眠ったはず…… 二度目ともなると物事を冷静に捉えることができるようですね。どうやら私は三周目に突入したみたいです。私は身支度などをしながら、今回どうやって成功に持っていくかなどを簡単に考え、そしてプロデューサーさんとクレシェンドブルーの皆さんが待つ事務所へと向かいました。

 三度目のプロデューサーさんの説明と三度目の顔合わせが終わり、三度目のユニット活動がスタートしました。前回は頑張りすぎが原因で失敗しましたが、ある程度の手ごたえは感じられたので、今回は練習も急速もバランスよく取り組むことにします。何といっても三度目の正直っていいますしね。今回こそは、と意気込み、また新たにレッスンや仕事に励みました。



14: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:30:24.05 ID:l4IqRebF0
 問題といった問題も発生せずについにライブ一週間前になりました。前回はここで倒れてしまいましたが、今回の私は超健康優良児そのもの。誰がどう見たって今日突然倒れるとは思わないでしょう。万全の体勢で私は最後の全体練習に臨みました。

 ここで私は過去にないほどのパフォーマンスを発揮しました。頭で考える前に体が動き、一切の音程のブレのない歌唱を披露することができました。油断していたわけではありませんが、今回の公演の成功を確信していました。



15: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:31:02.94 ID:l4IqRebF0
 私が自信に満ち溢れている一方で、他の四人はどこか不安そうな顔をしていました。プロデューサーさんも苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていました。練習終了後、急にプロデューサーさんがミーティングを開きました。普段ミーティングは一日の始まりや終わりの時だけにするものであって、このタイミングで開かれたのは初めてでした。プロデューサーさんが議題に挙げたのはただ一つ、今回のレッスンの反省会でした。

 最初に話すのは私だったので、自分が思ったままのことを言いました。上手に歌えた、踊れた、自惚れではありますが本番が楽しみなどと、嘘偽りのない本心を打ち明けました。



16: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:31:57.37 ID:l4IqRebF0
 しかし、他の四人は違いました。合っていない、だとか、何か違う、だとか、そういった感覚的なことで不安を抱いているようでした。特に印象的だったのは静香さんが言った、「ユニット活動をしている感じがしない」でした。私はみんなと感覚がズレていることに少し恐怖を覚え始めました。最後にはプロデューサーさんが総括して、

「お前たちは五人全員がソロとしてステージに立ってるようだ」

と言って、その日のミーティングは終わりました。結局、今回も失敗に終わりました。
以下略 AAS



17: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:32:51.46 ID:l4IqRebF0

 そこからは似たようなループが続きました。私も要領を得てきたのか、体調と練習のコントロールが上手くなってきたように思います。一週目より二週目、二週目よりも三週目と、レベルアップしているように思います。しかし、何度繰り返しても皆さんが感じる微妙な違和感を解消することはできませんでした。六週、七週……、と繰り返していくうちに私の心は憔悴していきました。そして八回目、ついに私は最初の段階でユニット活動を辞退しました。



18: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:33:30.77 ID:l4IqRebF0
 クレシェンドブルーは私抜きの四人で活動することになりました。予想とは反して、心残りはありませんでした。むしろやっと肩の荷が下りて解放感に満ちていました。クレシェンドブルーのことは気にはなりますが、きっとあの四人なら成功させてくれるでしょう。

 そんなある日、私は静香さんから二人で話がしたいと言われて、カフェに行くことになりました。忙しい合間を縫って私との時間を設けてくれたので、少しでも静香さんの気を楽にできたらと、意気込んでいました。



19: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:34:39.07 ID:l4IqRebF0
 静香さんとは色んなことを話しました。クレシェンドブルーのことであったり、未来さんや翼さんのこと、学校のことや他愛のない雑談など、楽しい時間を過ごしました。

 そろそろ帰ろうかと思い始めた頃、静香さんは急に真面目な顔になりました。それを見て私は少したじろいでしまいましたが、静香さんは表情を崩す気はありませんでした。重苦しい沈黙を破るように、ゆっくりと、静香さんは語りかけます。


45Res/21.50 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice