【氷菓IF】奉太郎「伊原摩耶花という女」-SS速報VIP

【氷菓IF】奉太郎「伊原摩耶花という女」

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76:名無しNIPPER
2018/02/25(日) 12:58:44.67 ID:Zb2RcIJm0
小学校にあがると、それは少し変わった。

幼稚園までは、会うのは必ず親が同伴であり場所はどちらかの家だったのが、親不在のままでも会うようになった。

待ち合わせなんてしていない。どちらかがふらりと家を訪ねて、公園やら図書館やらに出かける。

以下略 AAS

77:名無しNIPPER
2018/02/25(日) 13:00:04.14 ID:Zb2RcIJm0
その変化はかなりの幸運といえた。

小学校低学年、とりわけ男子にとっては、男女二人組が行動する姿は、かっこうのからかい相手だ。

三人が加わったことで他の児童は、家が近いから仲が良い、ととらえたのだろう。

以下略 AAS

78:名無しNIPPER
2018/02/25(日) 13:01:18.42 ID:Zb2RcIJm0
……ピピピピ。無機質なデジタル音ではっとなる。

俺が気づいた時、伊原が背をむけて携帯電話を取り出したところだった。

口元に手を当て話す横顔。

以下略 AAS

79:名無しNIPPER
2018/02/25(日) 13:02:15.39 ID:Zb2RcIJm0
だけど壊れていなかったとしたら。何かが邪魔して、近づけないだけだとしたら。

まだ俺たちは糸で結ばれていて、どこかでぐちゃぐちゃに絡まっているだけなのかもしれない。

その時その時の状況を受け入れ、見たいものだけを見ていれば安寧の日々を過ごすのは簡単だろう。

以下略 AAS

80:名無しNIPPER
2018/02/25(日) 13:03:27.93 ID:Zb2RcIJm0
自問の末、すぐに答えは出た。

毎日教室で顔を合わせるクラスメイト。授業中、休憩時間、

ふいに目が合い、そのたびに昔を思い出し居たたまれなくなる日々。

以下略 AAS

81:名無しNIPPER
2018/02/25(日) 13:04:09.45 ID:Zb2RcIJm0
一歩、一歩。また一歩。近づくごとに胸のあたりが熱を持っていく。自分でも聞こえるくらいに鼓動が高鳴っている。

伏し目がちな伊原は、近づく俺に気づいていない。俺は二歩分ほど離れた距離で止まった。

さすがに気配を感じ取ったのか、すっと顔をあげる。

以下略 AAS

82:名無しNIPPER
2018/02/25(日) 13:05:05.52 ID:Zb2RcIJm0
「伊原」

のどから絞り出すように、そう言った。いつの間にか枯れたように乾いている唇。

昔のように、まやかと呼ぶことはできなかった。それが俺の弱さなのかもしれない。

以下略 AAS

83:名無しNIPPER
2018/02/25(日) 13:06:15.39 ID:Zb2RcIJm0
「…久しぶりね…」

そっけない態度。けれど俺は少しだけ安心した。

三年の時をえて交わした言葉。変化のきっかけになるだろうか。

以下略 AAS

84:名無しNIPPER
2018/02/25(日) 13:07:16.39 ID:Zb2RcIJm0
伊原の逸らされていた顔が急にこちらを向いた。はっと目を見開き驚いた様子の顔。

それはすぐに困惑の色に染まった。

「待って。待ってよ。なんで謝るの？」

以下略 AAS

85:名無しNIPPER
2018/02/25(日) 13:08:11.85 ID:Zb2RcIJm0
「帰らないの？」

「えっ？」

俺は予期していなかった言葉に間抜けな声を出してしまう。

以下略 AAS

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