11:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/22(木) 08:47:35.01 ID:gJQnAjCL0
唇の端に何か液体の感触を感じて、やっと泣いているのだ、と気づいた。ライブ後は頭と体がちぐはぐになる、と私は疲れのせいにした。
「……ナナ、少しお手洗い行きますね」
菜々ちゃんは私に背を向けて楽屋を出た。気を遣ってくれたのだろう。
菜々ちゃんが帰ってこれるように、私もしっかりしなきゃ。気持ちを振り払うために、私はピックから目を離してテレビをつけた。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/22(木) 08:50:46.18 ID:gJQnAjCL0
スポットライトが点いた。李衣菜ちゃんと夏樹ちゃんがそこにいた。心臓の鼓動がバクバクとうるさい。
≪今日は何の日だー?≫
≪猫の日ー!≫
私と同じような煽り。イントロは私が知っているよりも長かった。よく見ると李衣菜ちゃんは青いネコミミヘッドホン、夏樹ちゃんはジャガーミミを着けている。
≪OKみんなわかってるねー!? それじゃあ聴いてよ!! 『ØωØver!!』≫
13:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/22(木) 08:51:18.81 ID:gJQnAjCL0
曲の終わり、李衣菜ちゃんは≪センキュー!!≫と言って何かを投げた。それはカメラの方に向かって飛んできて、次第に形が分かってきた。ピックだ。さらに近づき、それはカメラにぶつかって、画面は暗くなった。直前に見えたのは、白いペンで書いた拙いネコの絵だった。いや、拙くなかったかもしれない。私の視界は嬉し涙で滲んでいて、テレビの輪郭すらも覚束ないから。
菜々ちゃんが戻ってきた。私は彼女の顔を見れない。けど、彼女の胸に抱きついてしまった。柔らかい感触に包み込まれる。あーあ、そんなに泣いちゃって。カワイイ顔が台無しですよ? 菜々ちゃんはそう優しく語りかけた。
「……ほら、ハンカチです。どれだけ汚れてもいいですから、拭いてください」
ありがと、菜々チャン。つっかえつっかえのダミ声しか出ない。ハンカチはすでに少し濡れていた。見上げると目が合った。彼女の目もうるんでいて、ウサギみたいに赤かった。少し噴き出したように笑うと、「みくちゃんからもらい泣きしただけですからっ!」とそっぽを向かれた。
涙は留まるところを知らなかった。幸せに包まれたときにも涙ってこんなに出るんだな、と思った。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/22(木) 08:53:29.13 ID:gJQnAjCL0
以上で完結です。
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過去作 李衣菜「午後11時」みく「午前5時」 ex14.vip2ch.com
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