3:名無しNIPPER
2018/02/19(月) 01:26:59.04 ID:0stnYipM0
「提督」
「なあ、加賀」
「……何ですか?」
「旅に出てみたいんだ」
「……はあ」
「しおいの言っていた運河を見に行くのがいいな。大型の船を出して、みんなで……」
「提督。いい加減にしてください」
「…………」
加賀の言葉を聞いて、提督は素早くドアの前まで移動して、ドアノブに手を掛ける。
が、それを開ける前に加賀は提督の肩を掴んだ。
「さあ、やりましょう。年末決算と、報告書の作成を」
そう言われて、提督はゆっくりと後ろに振り返った。
その視線の先にある執務机の上には、大量の書類が。
そしてその横にも、書類が山のように積まれている。
「今まで逃げ続けていたようですが、私が秘書艦となった以上は逃がしません。鎧袖一触よ」
「私に何をするつもりだ。鎧袖一触……?」
「さあ、こちらに……」
「待て、加賀。これを見ろ」
そう言って、提督は加賀に何かを見せる。
それは、チケットのようだった。
「……これは?」
「実は昔の同僚から、レストランのペア招待券を貰ったんだ。だが、生憎と日付は今日まででな、どうだ加賀。一緒に食事でもしないか?」
「…………」
これは、提督の作戦だった。
何度も書類仕事から逃げていれば、最終的に加賀が差し向けられるのは容易に想像できた。
だから、美味しいもので誤魔化して逃げようと、無理を言って日付調整までして招待券を手に入れたのだ。
案の定、加賀はチケットを凝視したまま固まった。
そして、震える手でゆっくりとチケットに手を伸ばし……。
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