3:名無しNIPPER[saga]
2018/02/13(火) 18:29:51.32 ID:K48b6BSl0
「加蓮?」
そんなことを考えていると、彼が不思議そうに私を呼ぶ。そこには心配するような調子も含まれていて、こういうところかも、と少し思う。
「ううん、なんでもないよ。ただ、何をしてあげよっかなーって考えてただけ」
嘘だ。でも、彼は「そうか」と騙されてくれる。
しかし、言ってしまったからには考えなければならない。優しく、優しく……うーん。
「『優しく』ってだけだと難しいね。具体的に何か、ないの?」
「具体的に、って言ってもな」
「口に出すのは恥ずかしい?」
彼の唇が少しだけ下を向く。恥ずかしいらしい。
「恥ずかしいことかー」
「なんでわかるんだよ」
「わかりやすいから」
「そこまでか……」
気落ちした様子で彼は目を下げる。うん、たぶんそうだ。それ以外の理由はない、と思う。
「それで、その恥ずかしいことって何なのかな?」
「言いたくない」
「こんな機会そうそうないんだから言っちゃえば? 私みたいなかわいい子に優しくされるなんて、なかなかないよ?」
「だとしても、と言うか、だからこそだ」
「つまり、結構なさけない姿を見せるようなことか」
「なんでそこまでわかるんだよ……」
「私だからこそ、なんでしょ? プロデューサーって、あんまり私にそういう姿を見せたくないみたいだから。まあ、個人的には『今更何を』って感じだけど」
「そんなになさけないところ見せてるか?」
「傷付けたくないからノーコメントで」
「見せてるのか……」
見せてる。具体的に言えばついさっき見たくらい見せている。
「ほらほら、言っちゃいなよ。プロデューサーは、私に何してほしいのかなー?」
「なんでそんなに楽しそうなんだよ」
「プロデューサーが困ってるから」
「悪趣味だな」
「悪趣味かな」
「困っているのを見て楽しいとか、悪趣味以外の何でもないだろ」
かもしれない。でも、そこまで珍しいこととも思わない。
私に困っている彼の姿を見ていると、安心する。困らせてもいいと思えるということと、私に困ってくれているということが。
そう考えると、やっぱり珍しいことではないと思う。
私と同じ気持ちを抱いている人なら、きっとそう。
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