関裕美「0点の笑顔をあなたに」
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40: ◆5AkoLefT7E[saga]
2018/01/13(土) 00:08:19.32 ID:TDi1TcfI0

「今言ったように俺は以前、別の事務所にいたんだけど、その時はタレント部門だった」

「その時からプロデューサー?」

「あー、まあ、マネージャーとプロデューサーの中間というか……それは今も変わらないか」

「……でも移籍したんだ?」

「ああ。別にクビになったわけじゃないぞ? 自慢じゃないが、俺のついたタレントは売れるって評判だったんだ。1人売れっ子にして、また次の売れっ子を生み出して、また次をって具合にな」

「すごいね……」

「サンキュ。事務所からはよく”何人か同時に見てくれー”って言われてたんだけど、それは肌に合わなくって。その代わりに、一定まで売れたらすぐに次の人をーって」

思った通り、プロデューサーさんは凄い人だったみたい。
でも……

「じゃあ、なんで辞めちゃったの? 忙しかったから?」

「いいや。もちろん忙しかったけど、それは別に苦じゃなかった。でも、ダメだったんだ」

「……ダメ?」

「……よくあることなんだ。俺が売れっ子にした後に、どんどん人気がなくなって、芸能界からフェードアウトしていくタレントをたくさん見てきた。別に後任者が悪いわけじゃない。タレントは、その時代に合わせて最適なカタチがある。それが段々、古いものになっていった。それだけなんだ」

プロデューサーさんは言葉を絞り出す。

「俺は、プロデュースとか、そういう才能はあると思う。でもな、今まで育ててきた奴らを、タレントとして一時的に幸せにできたとしても、人間として幸せにしてやることはできなかった。それが、ダメだった」

「だから……?」

「ああ、だから辞めたんだ。そして、次は、次こそは。売ることだけを目的にするんじゃなくて、担当したその人の人生を良くしてやりたいって」

「……」

「そう、思った」

プロデューサーさんは続ける。

「思えば俺は、今まで向き合っていなかったんだ。客と事務所だけを見て、タレントを道具にしてしまっていた。どうしようもない人間だったって、気がついたんだよ」

少しの沈黙。
その沈痛な面持ちは、古い傷を抉られたかのように、プロデューサーさんを蝕む。
そんな顔しないで。
ねえ。

違う……!



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