勇者「ニートになりたい」
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594: ◆7Ub330dMyM[saga]
2018/02/10(土) 12:12:59.31 ID:D1nh3B2VO
【竜王城 玉座】

カイザードラゴン「馳せ参じました」

シンリュウ「優秀な個体を見繕っておくれ。お前の選んだ者の中から次期竜王を決める。無論、候補者にはカイザーも――」

カイザードラゴン「その前に! たしかめるまでもないですが……竜王様の口から直接! 噂の真相をお聞かせ願いたい!」

シンリュウ「噂には尾ひれがつくもの。ベビーは私の指示にしたがったまで」

カイザードラゴン「この後に及んで虚言を申されるのですかッ⁉︎ やつがロトの剣を持ち出したのでしょう⁉︎」

シンリュウ「それも、すべて、私のせいだ」

カイザードラゴン「では! 竜王様自らが勇者にロトの剣を渡したとお認めになるのですかっ⁉︎」

シンリュウ「そうではない。認めれば一族に災いがふりかかる。任せるものを間違えた。その責は私にあると言っておる」

カイザードラゴン「ベビードラゴンの処刑を今すぐにご下命ください! 我らの憤りは万の言葉をもってしても解消できませんっ!!」

シンリュウ「カイザー。いつも通り話すっぺ」

カイザードラゴン「……」

シンリュウ「ベビーはたしかにやらかした。んだども、なんとか、生かしてやっておいでぐんね?」

カイザードラゴン「アホぬかせぇっ! そったらこと認められっかあっっっ!!」

シンリュウ「おめぇらの憤りもわかる。でも、でもな? あいつのポテンシャルは、一族の誰よりだかいのよ」

カイザードラゴン「そっ、そったらこと」

シンリュウ「魔族は全体的に、世代交代するにつれてどんどん弱体化してってる。魔王様もお気づきのことなんだろうけどな」

カイザードラゴン「それがなんだっていうんだ! 人間より弱くならなきゃいいでねかっ!」

シンリュウ「わだすも同意見。だけんど、勇者っていう強力な個体がいる今、ちょっと不安。ちょっとだけな?」

カイザードラゴン「たかがにんげんだっ!!」

シンリュウ「それもそう。実際に力比べしてくりゃよかったと今になってさ、思うんだ。サキュバスが怯えきってるのがどーにもひっかかる」

カイザードラゴン「淫夢族など! 力はあまり強くないでねぇかっ!」

シンリュウ「ふふっ、わたすも死ぬと決まるまではなにからなにまでおんなじこと思ってた。ベビーは生きさせてあげてよ」

カイザードラゴン「……りゅ、竜王様……っ!」

シンリュウ「あの子が成長するまで、見守ってあげで。それが、一族のためになるがら」

カイザードラゴン「ば、ばかなっ!」

シンリュウ「呑んでくれれば、次期竜王選出なんで形だけでカイザーを指名してあげる。……遺言、聞いてくれるよな?」

カイザードラゴン「そっ、それでいいのか……大罪人になって、同族からツバをかけられるぞ」

シンリュウ「しかたねぇっぺよ。どうせ死ぬんだ。なにも怖いものなんかねぇ。屈辱は耐えればいい」

カイザードラゴン「……バカな王だ……」


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