【モバマス?】一ノ瀬志希?「志希ちゃん、失踪したくなっちゃったなー」
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10: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/01/08(月) 21:27:56.82 ID:MruIbyxGO
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「今日もおつかれさまでした〜!」

 あたしはスタッフのみんなに挨拶をして、楽屋で荷物をまとめる。
 楽屋の反対側ではフレちゃんが同じように帰り支度をしていた。

 プロデューサーといつものように仕事のスケジュールを確認して――
 そのとき、ふと、あたしは思っていたことを口に出した。

「そういえば――本物の志希ちゃん、もう戻ってこないの? プロデューサー」

「ん?」

 プロデューサーはあたしが何を言っているのかわからない、といった顔で首を傾げた。

「そのうち気が向いたら戻ってくるかもよー、根拠とかないけどー、じゃ、お疲れ様、志希ちゃん、プロデューサー♪」

 フレちゃんはそう言って楽屋から出ていった。

「はは、ま、そういうことで」

 プロデューサーはそう言って、あたしと仕事の打ち合わせを続けた。
 あたしはいつもの通り打ち合わせをしながら、心の端っこで思ったんだ。
 たぶん、もう本物の志希ちゃんは戻ってこないんだろうなって。
 失踪しちゃったんだろうなって。



 家に帰ったとき、携帯がメールを受信していた。
 内容は、今月のギャラの振りこみ。
 そのまま口座の残高をチェックすると、そこには税金とかを差し引いても十年以上は遊んで暮らせそうな金額が入っていた。

 携帯電話をテーブルに置いて、シャワーを浴びるため浴室へ向かう。
 と、そこで鏡の向こうの自分と向き合い、気づく。

「あー、ウィッグはずすの忘れ……」

 言いかけて、あたしは鏡の前に立ち尽くした。
 そこには、一ノ瀬志希が映っている。
 そう。今はあたしが一ノ瀬志希だから、一ノ瀬志希がそこにいるのは当たり前。
 じゃあ「あたし」はどこにいる?

 あたしは自分の心がぐらつくのを感じて、引きはがすみたいに乱暴にウィッグを脱ぎ捨てた。
 改めて鏡を見る。――まだ『一ノ瀬志希』の顔をしている。
 それを見たとき急に、あたしの中に、いくつかの恐ろしい思い付きが生まれた。

 あたしは居間に戻ると、テレビとパソコンのスイッチを点けた。
 テレビには一ノ瀬志希の過去のライブ映像のディスクを入れ、パソコンではちょっと前、あたしが影武者になる直前、いまは失踪している一ノ瀬志希の画像を検索する。
 それぞれの画面を停止し、ズームアップ。

「……違う……」

 よく似せられているが、別人だった。



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